◆逢瀬、そして契り・・・

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窓の外では二人の逢瀬を覗いていたかのような雀たちが鳴いている。そして、陽気な十一月の陽射しは、曇った窓ガラスを通り抜けて、優しく二人を見守っていた。 窓越しのポカポカ陽気のおかげでウトウトし始めていた二人だったが、進也のケータイがけたたましい音を立てて静寂を切り裂いた。 「誰やろ?この最高のムードを壊すマヌケなヤツは。」 「大事な電話やったらアカンから出とき。」 リナに背中を押されてベッドから出る。発信元は秀雄だった。 「もしもし、どうしたん?」 「いやあ、デートの最中やったら邪魔しに行こかなと思て。」 「残念ながらデートの最中やから邪魔しに来んといて。」 「やっぱり・・・。ほんなら今日はエエから、明日ホルモン屋に連れておいでな。親方もずっと待ってはるで。」 明日は大事なミホの卒業日。そんな日に連れて行くわけにもいかないし、店に来られても困る。 「大きなお世話や。それに明日は用事があるからアカンねん。クルマで出かけるから飲まれへんし。いずれ紹介するから、大人しい待っとき。」 「いやに焦らすやないか。ホンマはごっついブスで紹介すんのが恥ずかしいのちゃうか。」 「アホ。勝手に想像しとき。また月曜日、親方とこ付き合うたるさかい、今日は大人しい家族サービスでもしとき。ほんならな。」 それだけ言って一方的に電話を切った。 「ボクの友達でなヒデちゃんって言うのがおんねん。ボクを『エロナイ』に連れてったヤツやねんけど、マヤさんのお客さんやねん。」 進也はベッドに戻ってきて電話の主について解説し始めた。 「ほんならヘルプで会うたことがあるかもしれんな。」 「でもアイツも毎週行ってる訳ちゃうし、頻繁に会うてるってことはないと思う。もし覚えとてっても知らん振りしときな。」 「って、その人に会わなアカンの?」 不安げな顔で進也を見つめるリナ。 「一応親友の一人やからな、知らぬ存ぜぬでは通らへんやろな。大丈夫、そんな悪いやつやない。ちゃんとボクらを祝ってくれるはずやし。」 「わかった。シンちゃんもウチのお父さんお母さんにも会わんとイカンのやし、お友達ぐらいどうにでもなるよな。」 「さて、そうと決まったら、ちょっとお買い物に行かへん?」 「何を買うん?」 「リナがこの部屋に来たときに使えるもの。専用のカップとかお箸とか。」 「ついでに歯ブラシとかも?」 「泊まってくことがある予定?」
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