◆逢瀬、そして契り・・・

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「もしかしたら・・・・・。うふふ。」 二人はベッドから抜け出して、暖房の行き届いたリビングへ座を移す。脱ぎ散らかされた衣服が慌しかった時間を思い出させる。 「今日は何時までに帰ったらエエの?」 「そうやな、彼氏のところへ行ってくるって言うたから、初日からあんまり遅いのはアカンかな。九時ぐらいにしとこかな。どうやろ?」 「うん、今日はその辺がエエかもしれんな。晩御飯はどっかで食べよな。」 「飛車角いこ、餃子食べたい。」 飛車角とは餃子のチェーン店。関西を中心に今や全国展開する超有名チェーン店である。 「そんなん食べて、明日のラストデー大丈夫か。お店の人に怒られへんか?」 「怒られたってええやん、もう最後やし。それに、チューするお客さんはシンちゃんだけやもん。そうブログにも書いたし。明日はヘルプ周りだけにしてってお願いしてるし。」 「ボクは?」 「シンちゃんだけは別。お店の人シンちゃんのこと覚えてるで。いっつもミホ2セットやったし。そんなんシンちゃんだけやったみたい。」 「良かった。」 もちろんこうした会話も全て脱ぎ散らかされていた服を拾いながら、そして着衣しながら行われていたのである。想像してた? 買い物はB市の商店街で済ませる。進也の部屋から商店街までは歩いて数分。もちろん手をつないで歩く。 「寒くなってきたから手袋がいるかな。手をつなぐ用の手袋ってあるかな。」 「それってあったらええなあ。リナ作ってみよかな。こう見えても編み物とかもできんねんで。すごいやろ。」 「自分でいうか。でもすごいな。ボクにはできひんことや。」 「でもな、めんどくさがりやから、いつできるかわからんで。」 「うん、それもそやな。」 「そこは納得すんねんな。」 「ははは、説得力あるもん。」 流石は大阪人の二人。会話もさながら夫婦漫才顔負けか。 二人が買った小物は、ペアのマグカップとペアの箸、ペアの茶わんにペアのコースター、そしてペアのパジャマである。 「パジャマはちょっと早かったかな。」 「ええねん。これ可愛かったもん。シンちゃんこれ着たら、きっとめっちゃ可愛いで。」 「よし、買い物も終わったし、餃子を鱈腹食べに行こか。」 進也とリナはまたぞろ手をつないで来た道を帰っていく。 木枯らしもどこ吹く風と気に留めず、軽い足取りは幸せそうな二人を物語っていた。
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