◆逢瀬、そして契り・・・

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部屋に戻って食器は棚に、パジャマは箪笥に片付ける。エアコンのスイッチを入れて部屋を暖め出す。暖かくなるまで少し時間がかかるのは仕方がない。 「そろそろコタツを出そかな。その方がすぐあったまるしな。」 「コタツええなあ、リナの部屋もコタツ。ネコみたいに丸まらへんけどな。」 「だってリナも犬やんか。コタツでは丸まらへんやろ。」 「シンちゃんもな。」 「うん、その通りや。」 しかし、まだコタツが準備されていない部屋では、急いで暖を取るには抱き合うしかない。 リナは進也に抱きついた。 「とりあえずは、これが一番あったかい。」 そう言ってリナが顔を上げた瞬間を見逃す進也ではなかった。瞬時にリナの唇を奪う。 「んんん。」 リナの腕は進也の首に、進也の腕はリナの腰に絡みつくように回されている。 「ちょっと暖まったら出かけよか。餃子食べに。」 「クルマで行ったらシンちゃんビール飲まれへんやろ。B市駅からK市駅までバス出てるし、それで帰るから歩いていこっ。」 「ビール飲まんでも平気やで。」 「一緒に飲みたいの。」 可愛い笑顔でニコッとされると、進也はたちまちイエスマンになってしまう。素直に恋している証拠かも。そう思うと進也もまだまだ若い。 お目当ての餃子のお店はB市の繁華街に二軒ある。互いに競合する店舗だが、客の好みは意見が分かれがちだ。 「ボクは北系列が好きなんだけど、リナは?」 「リナは南系列が好き。」 やっぱり意見が分かれたようだ。 「シンちゃんどっちでもエエって言いそうやから、ココは公平にじゃんけんで決めよか。」 確かにじゃんけんで決めるのは公平極まりない。 「じゃーんけーん、ホイっ。」 勝ったのは進也だった。 「ボクな、じゃんけん強いねん。勝率七割ぐらいあるで。」 「今日のところは仕方がないな。別に北系列も嫌いやないし。」 「次に行くときは南系列にしよな。」 「あかんで、やっぱりじゃんけんやで。そこはこだわらな。これから餃子食べに行くときは全部じゃんけんな。」 リナは負けたのがよほど悔しかったのか、次からは連勝するつもりなのか、二人の最初の取り決めとなったのがまさかのじゃんけん勝負だったとは。 まだ夕飯時には少し早い時間。店内にいる客もまばらだ。二人は余裕のある四人がけのテーブル席を陣取り、さっそく餃子とビールを注文する。 「今日はリナもビール。餃子といえばビールやろ。」
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