◆逢瀬、そして契り・・・

10/19
前へ
/209ページ
次へ
「そこだけはオッサンみたいやな。いっつもカクテルとか飲んでるイメージやけど。」 「シンちゃん、餃子はビールやで。餃子だけは違うねん。いっつもは可愛くカクテル飲んでるで。」 やがてビールと突き出しのザーサイが運ばれてきて、二人の餃子パーティが幕を開けた。 「まずはかんぱーい。」 進也はそのまま一口、リナはザーサイをつまみながらビールを流し込む。 「南系列に行くと、この突き出しがメンマになんねんな。突き出しは絶対ザーサイの方がエエと思う。」 リナにはリナのこだわりがあるようだ。 やがて運ばれてくる大盛りの餃子。二人で六人前も注文している。 進也は心配そうな顔でリナに尋ねる。 「もしかして餃子だけでええの?箸休めに八宝菜ぐらいは注文しとこか。」 「うふふ。リナこれが好きやねん。他はいらんねん。」 リナの餃子好きは伊達ではなかった。あっという間に二人前が目の前から消えてなくなっていく。 進也は餃子をほお張りながら明日の予定を話しだす。 「明日は終わってからどうするん。」 「ん?いつもと一緒やけど。」 「明日はラストタイムを目指して行くから、ボクの足はクルマやで。帰りは家まで送ってあげよか。」 「送り狼になるつもりやな。」 「うん。」 「ええよ。送って。」 これで明日の約束は完了した。明日はミホとしてのラストナイト。進也の手から進也の手に委ねられるのである。 さては餃子で満腹になった二人。 「今日は食べすぎたかな。明日からダイエットしな。」 「ボクは多少ぽっちゃりでも大丈夫やで。」 「多少やろ?」 「うん、多少。」 「うふふ。頑張るし。」 今日は進也にとって最も幸せな日となった。この幸せな日がいつまで続くのだろうと思っていた。やがて来る運命の日から数えておおよそ四十日前のことだった。 「ホントにバスで大丈夫?」 二人はB市駅のバスターミナルにいた。K市駅行きのバスは十分後に発車する。 「このバスに乗るん初めてやないし。それに子供やないから大丈夫。」 土曜日の夜はまだ人だかりがそぞろ。行き交う人も多く、K市行きのバス利用者も少なくない。 「今日はありがとう。リナのこともっと好きになった。」 「初めてのときはシンちゃんの部屋でって決めてたから。」 「しばらくはベッドについたリナの匂いだけでイってしまうかも。」 「アホ。」
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加