◆逢瀬、そして契り・・・

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「ついたで、ココの肉盛定食がキッツイらしい。」 二人して暖簾をくぐる。店内を見渡す限り、ごく普通の店だ。 「若い女の子と付き合うにはスタミナがいるやろ。ココの店は精力満点のトドの肉を食わせる店やねん。」 「なあヒデちゃん、確認したいんやけど、この店トド以外の肉もあるんやろうな。」 「勿論あるで。クマにアザラシにカモシカにダチョウやろ、それにワニもあるで。」 まるで自分の店であるかのように、自慢げにメニューを紹介する。 「普通の牛とか豚でええねんけどな。せめて猪とかないん?」 「あのな、若い女の子と付き合うには色々と力を付けとかなあかんねん。今日はオイラの奢りやし、スタミナの付くもんを食べとき。 まさかこんな店に連れて来られるとは思いもしなかったが、これも秀雄の優しさである。進也は諦めてテーブルに着く。メニューを見ると、まず肉を選ぶところから始めることになっている。色々見渡したが、ワニは以前にも一緒に食べたこともあったし、かと言ってトドやアザラシは遠慮したい。ここは大人し目のカモシカにしておこう。これなら鹿肉と変わりないだろう。 秀雄のチョイスは折角だからとトドをチョイス。進也も彼の冒険心には脱帽する。 「昨日のデートはどうやったん?」 注文直後にいきなり質問が飛んでくる。 「買い物して、餃子食べてビール飲んで、駅で見送っておしまい。」 「あのな、シンちゃん中学生か。今どき高校生でもそんなデートせんで。今の女の子はあっちの方も結構マセテるんやで。」 どうやら、かなりエッチな話を期待していたようだ。 「まあほんでもまだやったんなら、今日のランチは好都合や。ばっちしスタミナ付けて今晩に臨みや。」 秀雄の親切心もここまで来ると少し面白い。 「今夜は用事があるって言うたやろ。今日はデートちゃうで。」 「そうか、まあ生理学的にいうと、今日喰った肉は分解されて体の栄養になるんは明日以降や。どのみち今夜のエッチには間にあわへんから大丈夫や。」 何が大丈夫なのかわからないが、これも秀雄の思いやりか。 「で、どうするん。結婚するつもりなんやろ?」 「まだ付き合い始めたばっかしやで。そやけど考えてはおるで。」 「ええなあ。若い女の子。ピッチピチやろな。そんなんいうてたらまた『エロナイ』思い出すなあ。今夜あたり行こかな。」 進也はその言葉を聞いて戸惑う。 「いっつも何時ごろ行ってんの?」
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