◆逢瀬、そして契り・・・

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「そうやなあ、ちょっとビールをひっかけてからやから九時か十時ごろやな。最終電車には、間に合わなあかんからな。」 今宵の進也の入店予定は午後十一時三十分。ラストデーだから3セット分行くつもりだった。日曜日は土曜日ほど深夜まで粘る客はいないと聞いていた。秀雄もそのパターンでは帰るつもりだろう。 「行っといで。それですっきりできるんやったらな。」 「シンちゃんも行くか?」 「ボクは用事があるって言うたよな。何べん言わせる。」 そうこうしているうちに注文した定食が運ばれてきた。 「ヒデちゃん、それ、すっごい臭いしてるな。食べられるん?」 流石の秀雄も少し心配そうな顔をして額の真ん中をしかめている。 「オイラもスタミナ付けて今晩に挑むぞ。」 進也のカモシカもなかなかだったが、秀雄のトドは珍品極まりない肉だった。もちろん、彼らはすごい顔をしながらシェアして食べきったのだからお見事である。 さて、進也は気を取り直して夜に備える。ランチだけを終わらせて、秀雄と別れた進也はまっすぐに部屋に帰り、昼寝の準備をする。 出動が十一時三十分。ここを出るのが十時四十分頃。おそらくは戻ってくるのが夜中の三時頃だと考えると、今から少し昼寝をしておくのがベターである。そう思って今朝は眠い目をこすってかなり早起きしていた。 ベッドに残されていたリナの残り香はすでに消えていた。それでも進也は昨日の情事を想像しながらベッドに入る。顔はすでにニヤけている。 しかし、お腹も膨れて眠くなるのは人間の生理現象の一つである。特に苦労することないまま、進也はウトウトとしながら心地よい迷宮に陥った。 目が覚めたのは午後五時を過ぎた頃か。人間というものは寝ているだけでもお腹が空くものとみえる。そのときすでに適度な空腹が進也にも訪れていた。 「夜に備えて軽く入れておくか。」 冷蔵庫を開けて冷や飯と玉子と葱を取り出す。進也は自分で料理をするのは割と嫌いじゃない。ネギを刻み。熱したフライパンに油をひいて玉子と冷や飯を炒めはじめる。味付けはシンプルに塩と醤油を少々。フライパンを操る腕前も慣れたものだ。 ちゃちゃっと皿に盛りつけ、ちゃちゃっと食べる。こんなことをちゃちゃっとできて、そんな家事にも慣れてしまうから、独りになっても平気と思われるのかもしれない。
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