◆逢瀬、そして契り・・・

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食後は軽くウオーキングをして体をほぐす。もともとスポーツ好きの進也だから、体を動かすことも面倒くさがらない。 部屋に戻るとシャワーを浴びて髭をあたる。ここから先はいつものルーチンだ。ラストデーだから少し着飾っていこうかな、なんて思ってみたが、そんなしゃれた服を持ち合わせてはいない。いつも通りラフなスタイルで仕上げる。 ラストデーのためのプレゼントも忘れてはいけない。ウオーキングの途中で買った花を車に詰め込んでおく。これで準備は完了である。あとは時間が来るのを待つだけだった。 進也は自分の事の様に緊張していた。 一つは最後の客として出向くこと。もう一つは、ミホの卒業の原因が自分であることを店が周知していること。 流石にこれは恥ずかしい。どんな目線で見られるのだろう。そういう意味では相当に不安だった。 店の前に到着したのは予定通り十一時三十分頃だった。オーラスまでいるためには、予定の時間を少し過ぎてから入った方が良い。時計を確認すると正確な時刻は十一時三十二分を指していた。ちょうど良いタイミングだ。 いつもの様に見慣れたドアを開き、いつもの黒服お兄さんが出てくる。そしてこれが最後のオーダー。 「ミホさんをお願いします。」と言いかけた瞬間。 「お待ちしておりました。ミホさんですね。」と先に言われた。 予想外の対応に少し驚く進也だったが、気を取り直していつものドアを通り抜ける。中の客はまばらだ。 進也はいつもと違って奥の四人掛けの十五番シートに通された。 そしてしばらくしてミホが現れる。 「うふふ、シンちゃん、待ってたで。」 今日の衣装はいつも通りの白いキャミソール。特別な衣装じゃないのがいい。 「表のお兄さんまで知ってるみたいやな。今日のご指名はって聞かれへんかったで。」 「そうやで、みんな知ってるで。それに今日のミホはシンちゃん以外はヘルプにしかついてないし。」 「あとはラストまで一緒にいられるねんな。」 「今日な、シンちゃんのお友達が来たみたい。でもマヤさん、ミホとシンちゃんのことは最後まで黙っててくれたって言うてはった。」 「そうか、ほんなら終わったらミホからお礼言うといてな。」 「そんなん、じぶんで言うたらええねん。どうせラストまでおるお客さんなんかおらんと思うし。」 そんな事を言ってる間に、場内コールが聞こえた。 =マヤさん十五番テーブルラッキータイム=
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