◆逢瀬、そして契り・・・

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「えっ?今日のミホはボクだけの指名っていうてなかったっけ?」 ミホも首をかしげて進也の顔を見る。 「ミホは呼ばれてへんで。」 やがてあらわれるマヤ嬢。進也とミホの向かいの席に座り、 「こんばんは。おめでとう。ミホちゃんをよろしくね。九時ごろヒデさん来たけど、黙っといてあげたで今日の事。お昼は一緒やったらしいやん。」 「ありがとうございます。」 進也は深々と頭を下げて礼を述べた。 「ミホちゃん幸せにしてあげてな。もうこの店来たらアカンで。来たらミホちゃんに報告するからな。でもうらやましいな。」 それだけ言って進也たちの席を去って行った。 続けて場内コールが流れた。 =ユカリさん十五番テーブルラッキータイム= 普段は日曜日に出勤していないユカリ嬢までお目見えだ。 「どうしたんですか?なんで日曜日にいるんですか?」 進也は驚いたように尋ねた。 「あんたらに一言だけ言いたくてわざわざ来たんやん。よかったなあシンちゃん。ミホちゃんから聞いたときはちょっとびっくりしたけど、あんたやったらええかなと思った。あんたやったら、年の差なんか関係なくやっていけると思う。色々と苦労もあるかもしれんけど頑張らなあかんで。」 ユカリ嬢が去った後も場内コールは続く。 =チヒロさん十五番テーブルラッキータイム= 今まで進也の席にヘルプに来たことのある嬢が順繰りに顔を見せに来て、祝いの言葉を述べに来る。嫌味や愚痴をこぼす嬢は一人もいない。 その間中ミホは、何も言わずに黙って進也の隣に座っている。その表情には嬉しさと恥ずかしさがこみあげていた。 最後には店長までがやってきて、 「オレも長いことココの店長やってますが、こんな感じで卒業する女の子は初めてなんですよ。よかったですね。」 皆の顔見せが終わるまでにおおよそ三十分かかったが、後の時間はミホとのまったりタイムが待っているだけだった。 「今日は何?なんか恥ずかしいなあ。」 「ミホもこんな感じになるって知らんかった。ホンマに恥ずかしいなあ。」 ミホも少し照れながら進也の肩に寄り添う。 「みんながボクらのこと喜んでくれてるみたいで嬉しいな。」 「こんなにおおっぴらにお客さんと付き合うのってミホが初めてみたい。」 「でも、お店としてはこんなパターンが増えるのはNGちゃうんかな?」
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