◆進也の友だちとリナの友だち・・・

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「いつ来ても大丈夫なように部屋を片付けてた。疲れたし、眠いから今日はもう寝るわ。その前におやすみだけ言おうと思って。」 「ありがとう。おやすみ。また明日な。」 元来面倒臭がりのリナはグッドナイトラブコールも短め。今夜に限って言えば、疲れている進也にとっては長電話になるよりは良かったのかもしれない。 そして来る火曜日。 暦は今日から十二月になっていた。 師が走るほど忙しくなる年末の月。進也たちの会社もそれなりに忙しい。しかし、進也は今日の分の残業分も昨夜のうちに先行してあったので、今日は定刻で仕事を切り上げる。その時間少し前に秀雄がやってきて、 「シンちゃん、仕事すぐ終われるん?手伝ったろか?」 と息巻いてやってくる。自分の仕事はどうなってるんだろうと感心する。 「大丈夫。昨日できる限りのことやっといたから、今日はすぐ終われるで。」 「ほんなら、例のところで例の時間でOKやな。」 はしゃいでいる姿は子供みたいだ。 「自分のことみたいに楽しそうやな。」 「アホ、大親友の彼女やで。めっちゃ緊張してるに決まってるやん。」 そういう秀雄の顔はかなりニヤけている。 「余計な心配せんと、先に行っといて。」 少し先が思いやられる進也であった。 そして午後六時三十五分。A駅で待つ進也のもとにリナは笑顔で現れた。 進也は両手を広げて待つ。そこに飛び込んでくるリナ。 「ごめん、ちょっと遅れた。電車の時間がわからへんかってん。」 「ええよ。待ったんちょっとだけやし。」 リナは進也の腕に自らの腕を絡ませて、ニッコリと微笑む。 「さあ、ちょっと緊張するけど、シンちゃんのお友達のところへ行こか。」 「お嬢さん、覚悟はいいですか。」 「もちろんですわよ。」 今の二人には怖いものなし、といったところか。 店の近くまで来ると、暖簾から顔を出して、まだかまだかとキョロキョロしている秀雄の様子が目立つほどよくわかる。 「おじさん向けのホルモン屋やけど、ボクと一緒やから大丈夫やろ?」 「うん、確かに女の子一人で来るには勇気のいりそうな店やな。」 「それでも、たまにおるで。一人で来る女の子。」 そんな会話をしているうちに、秀雄が二人の姿を先に見つけた。大げさなリアクションで手招きする秀雄が滑稽でたまらない。 リナは可笑しくなって「あはは」と笑う。 「あの人?シンちゃんのお友達って。」 「恥ずかしながらそうです。見覚えある?」
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