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「そうやな、あるな。何回かヘルプで行ったと思う。」
「黙っとき。最終日には会うてないはずや。彼もそう言うてたし。」
やがて二人は暖簾の前まで到達する。
「親方、シンちゃん来たで。えらい若いべっぴんさんや。」
「どれどれ、おう、シンちゃん。まあ彼女もそこへ座り。あんまり綺麗な店ちゃうけど、かんにんやで。そのかわり旨いもん出したるさかいな。」
今日は親方も口が軽い。やや緊張しているせいだろうか。
「親方、ヒデちゃん。紹介するな、サトウリナちゃんです。」
「リナです。よろしくお願いします。」
「そして彼が、親友の長沢秀雄君こと通称ヒデちゃん。」
「秀雄でーす。ヒデちゃんって呼んでね。」
それぞれの紹介が終わり、あらかじめ秀雄が占領しておいてくれた席に座る二人。カウンター席なので、リナは真ん中に進也を置いてその隣に座った。
「まずは乾杯や。」
それぞれのグラスに注がれたビールを手に持ち、秀雄の発声でグラスが音を鳴らす。
最初に切り出してきたのは以外にも親方だった。
「シンちゃん、可愛い子やな。うらやましいで。」
秀雄も負けずに話しに入り込んでくる。
「なあリナちゃん、ホンマにこんなオッサンでよかったんか?騙されてないか?何か弱みでも握られてんのとちゃうか?」
「うふふ。シンちゃんとっても優しいの。女の子って結局優しい人に弱いねん。」
「どんだけ優しいん?」
「すっごい優しい。それに頼れるし。」
親方がホルモンを持ってきたついでに、思い出したように切り出した。
「なんでも駅で困ってるとこを助けて貰ったんやって?」
それを聞いてリナは首をかしげる。
「ん?駅で?・・・・・。ああそうやったなあ。」
何かに気づいて慌てて答えるリナ。
うろたえる気配を見せる進也。
その進也を見て秀雄は何かに気づいたように、皿の上のホルモンをコンロでジュージュー焼きながらリナに尋ねる。
「なんかどっかで会うたことないか。なんか誰かに似てるような気がするんやけど。」
「他人のそら似やろ。」
「ん?よう顔を見せて。ん?んんんんん?」
秀雄はジロジロとリナの顔を覗きこむ。
「いやっ。」
恥ずかしがって進也の腕の中に顔を隠すリナ。
「もしかして、ミホちゃんちゃう?一昨日卒業したって言う。」
リナは首をかしげてそ知らぬふり。
「だれ?」
「ヒデちゃん、あんまり彼女をいじめんといてくれるかな。」
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