◆進也の友だちとリナの友だち・・・

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「いきなりでゴメン。でもガマンできひんかった。」 「うふふ。そうやろうと思てた。予想してたで、いきなりのキスは。」 進也はリナに見透かされていた自分の行動を心地よく感じていた。二人の感情が合致していることに等しいからである。 「まずはコーヒーでもいかがですかお嬢さん。」 「外は寒かったからな。あったかいの飲みたい。」 流石に十二月にもなると北風は容赦なく人々の体を冷たく叩きつけながら通り過ぎる。五分も歩くと、電車の中の温もりなど保持できるはずもない。 すでに進也の部屋にはコタツがセッティングされており、二人は足早にコタツに足を突っ込んで、即座にスイッチを入れた。 「こないだ買ったカップをさっそく使えるな。風呂沸かしてくるわ。暖まらんとな。」 「シンちゃん、あっちの部屋で着替えてきていい?」 いつの間にかリナは大きなバッグを持ち込んでいた。ホルモン屋へ行く前に大きめの荷物は、駅のロッカーに置いてあったようだ。 リナはラフな普段着に着替えると進也の目の前でくるっと回って見せた。 「可愛いやろ?今日のために用意したんやで。」 赤と白のチェック柄のスウェットのようで、ところどころにフリルがついていて、どことなくサンタクロースを連想させる。 「ほんならボクも着替えて来ようかな。」 お揃いのカップにコーヒーを用意して、進也も部屋着に着替えてくる。 さすがに部屋着までのお揃いはなく、進也のスウェットは地味なカーキー色の上下である。進也はこの深い緑色が好きなのだ。 元来コタツというのは足を入れて座る箇所が四面あるのが普通だ。この部屋のコタツも特段他のコタツと形が違っているわけではない。普通の正方形だ。にもかかわらず、二人は並んで座る。やや狭いのは仕方がない。ソファーを背もたれ代わりに、足を温めながら、上半身は互いの体温で温めあっていた。 自然と二人の距離は近くなる。やがて見つめあい、そして唇を求め合う。互いのネットリとした感覚を確かめ合っていたとき、風呂の用意が出来上がるチャイムが鳴り響いた。 「お風呂ができたみたいや。先に入っといで。」 「お風呂で迷子になったらアカンから、一緒に入ろっ。」 進也もホントは一緒に入りたかった。だけどなかなか言い出せないものだなと思っていた矢先のリナからの申し出だった。もはや断る理由はない。 「ほんなら脱がしっこしよか。」
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