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あるときヘルプに来た貫禄のあるおねいさんの嬢が言ったことがある。
「ここは風俗ではなく接客業なのよ。」
別に叱られたわけではないが、ボクにとって目からウロコが落ちた瞬間でもあった。
確かに客も嬢も互いに接する部分があるので、まさしく接客業とはよく言ったものだ。
完全に納得できた。だからボクはミホに接触するのである。
なにわともあれ、ボクぐらいの中年齢層になると若い女の子の肌の感触なんて、それ自体が異常事態みたいなものだから、若干気が狂っていると思われても仕方ないのかもしれない。それでもなるべく理性を保つようには努力しているが。
そうしているうちに、本日の悦楽の時間がまもなく終わりを告げる。
今日は延長せずに帰る予定である。
「もう帰るん?」
一応営業用のセリフだけはちゃんと覚えたようだ。
「今日あと2セット延長して次の機会に来れなくなるよりも、今日はこのまま帰って、また二週間後にちゃんと来た方がええやろ。」
基本的にはボクの懐具合との相談なのだが、まさかキャバに溺れて破滅する道だけは避けねばならない。そのためにも、使える小遣いをちゃんと企画立てて使わねばらならないのがサラリーマンの悲しい部分でもある。
それでもミホは、
「ウン、わかった。また来てな。」
と、無理には引き止めない。噂では、かなり強引に常連客を引き止める嬢もいるらしいと聞いたが、ボクならそんな嬢はお断りである。その代わりに、ミホのところへは出来るだけコンスタントに訪れてあげたい。あの美しい曲線美を無条件で提供してくれているのだから。
そしていつものように後ろ髪を引かれながら店を後にする。
ときおり霧雨が街灯を滲ませる五月の夜だった。
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