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やがて一通のメールが返ってくるとそれで安心するという仕組みである。それが彼女のコントロール内で行われているのか、さにあらずか。
わかっていることは、ボクが彼女に嵌ってしまっているということだけ。
ある金曜日の夜、ヒデちゃんと飲みに行く機会があった。
「やっぱり離婚するんか。」
「ああ、あともうちょっとでハンコ押したらしまいや。」
「子供らはどうすんねん。」
「男の子やし、どっちに行くかは本人らに任せてる。そういうことになっとる。たぶん母親んとこへ行きよるやろうけど、ボクはどっちでもええ。男の子やし、そんなに手はかからんやろ。なんかあったら、ボクの実家へ行きよるわ。」
などと割りとライトに考えている。
「中学生やったら、微妙なんちゃうん。ウチみたいに女の子やったら難しいとこやったやろうけどな。」
ヒデちゃんの子供は高校生と大学生の娘がいる。ウチよりもちょっと早い。それに息子と娘では、確かに感受性は違うのかもしれない。
「まあ、きっちり離婚出来るんやったとしたら。お手並み拝見さしてもらうわ。」
「うまいこといったら、ヒデちゃんとこも考える?」
「前向きにな。」
なんて話をしながらビールは進む。
「そうれはそうと、この後、あそこ行くか?」
ヒデちゃんが言ってるのは『エロチックナイト』のことだろうと思っていたが、ボクはわざとシラを切る。
「ん?あそこってどこ?」
「わかってるやろ、『エロナイ』やんか。オイラな、あそこ結構気に入ってんねん。お気に入りの嬢がメッチャよくてな。マヤちゃんって言うねんけど、話もおもろいし、エロいし、最高やで。」
「ヒデちゃんが気に入ってんねやったら行ったらええやん。ボクは遠慮しとくわ。」
「なんでや、ちょっとおもしろかったやろ。シンちゃんもそう言うてたやん。」
まさかほぼ二週間おきに通ってるなんて言えないので、
「あんときはそう言うたけど、やっぱりボク向きやないで。ヒデちゃん、ボクに構わんと行っといでな。」
ボクの訪問は水曜日と決まっているし、金曜日にはミホはいない。他の女の子に会いに行っても会話を一から組み立てるのは面倒だ。
結局、この夜はヒデちゃん一人で『エロチックナイト』へ向かうこととなった。
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