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「また気が向いたら付き合うわ。そん時はメールアドレス聞いてみるわ。」
なんて話をそらせて、いい加減な答えを返しておいた。
さて、メールの中身はなんだったんだろう。恐る恐る開いてみる。
「今週はシフトが変わります。月曜日がお休みで木曜日に変更です。水曜日か木曜日のどっちか久しぶりに会いに来てね。」という、出勤日変更の営業メールであった。
まあ何もないよりはいいかも。
そんなメールがあったので、出動日についてメールを送る。
「水曜日と木曜日ならどっちがいい?知らないお客さんばっかりになる木曜日の方がいいかな?」
すると帰ってきた回答は、
「どっちでもええけど、やっぱり木曜日の方がええかな。知らんお客さんばっかりやと不安やから。」
これでボクの出動日は次の木曜日に決定した。
いつもよりは少な目の残業をこなしてから退社し、店へと向かう。
すでに十九時すぎ。すでにオープンから一時間は経過しており、店の看板はいつもと同じようにキラキラと電飾が輝いていた。
入り口でいつものボーイが「ご指名は?」と聞くので、「ミホさんを。」と答える。
いつものように2セット分を前払いして。
今日は平日にもかかわらず、割りとお客さんが多い。いつもの水曜日と少し様相が違う。
そんな慣れない木曜日の雰囲気の中、一見してわかる程にテンションの低い感じのミホがやってきて、ボクの隣へちょこんと座る。
「こんばんは。今日はどうしたん?なんか怒ってんの?『シンちゃん座り』もしてくれへんの?」
「えー、しなあかん?今日はな、なんか体調がイマイチやねん。昨日は微熱あったし。せやから気分が全然乗らへんねん。」
「えー、今日は抱っこもチューもなしか?」
「ゴメン。今日はこのままいさして。風邪うつってもアカンやろ。」
「他のお客さんはうつってもええのん?」
「他のお客さんもチューなしやで。」
そう言って隣で座ったままボクの手をとり、彼女の手の中でボクの指を転がしている。
「匂いクンクンもしたらあかんの?」
「うん。今日はクンクンされるのも嫌。」
なんてタイミングの悪いときにきたのだろう。もうこうなったら仕方がない。先に2セット分も支払ってしまっているのだから、一時間二十分はガマンの時間だ。
「ほな、今日はガマンする。その代わり、次に来るときには元気な顔を見せてや。それと、最後帰る時に一回だけちゃんと抱っこさせてな。」
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