◆ブログとお土産と我慢・・・

7/14
前へ
/209ページ
次へ
「うん。」 元気のなさげな返事も今日は仕方ないってところか。 「昼間の仕事が忙しなってんの?」 「最近昼と夜との掛け持ちが、体力的にしんどいねん。」 「土曜日は休みやろ。そん時はちゃんと寝られてるん?」 「寝てるときもあるし、友だちと出かけたりもしてる。」 確かに見た目も返事をする様子も辛そうだ。それでもボクにもたれかかる髪からは、普段と変わらぬふんわりとした淡い香りが漂ってくる。 「顔だけはちゃんと見せて。」 とりあえず表情から何かを伺い出せないかと思い、顔を上げさせて瞳を見つめる。 「髪切ったよね。」 何気なく言った言葉であったが、彼女としては嬉しかったらしく、 「もう髪切ってから二週間も経つのに、気づいてくれたんまだ二人だけや。受付のお兄さんもやっと今日やで気づいたん。」 「ボクはすぐわかったで。えらいやろ。」 「えらいえらい。」 そう言ってボクの頭をなでる。そしてそのままボクの懐の中へ体を沈めていく。 ご馳走を目の前にしてお預けを喰らっている犬の気持ちってこんなもんだろうなと思う。ヨダレこそ垂れてはこないが、気持ち的にひもじいことこの上ない。 「元気出すために、焼肉食べにいこか。」 「そんなん行かへん。」 今日は答えもそっけない。 「まあいいや。ところでブログの更新はせえへんの?」 「ミホな、ああいう面倒くさいの苦手やねん。メールとかも全部返せてないやろ。」 「メールはな、初めからボクがそれでエエって言うてるから、別にかまへんねんけど、ブログはお嬢さん方のPR用に店が用意してくれてるツールやから、ちゃんと使っとかなアカンで。古株のサクラさんとか人気のヒトミさんとか、みんなコンスタントに更新してるやろ。いいところは真似していかんと、なっ?」 「うん、わかった。頑張ってみる。」 「書きやすいように、ネタの提供したげよか。前の『ごま玉子』のお土産のとき、すぐブログ書けたやろ。ああいうやつ。」 「ネタ欲しい。」 ボクの腕の中で、上目遣いで甘えるように答えるミホ。 大阪の場合、何をするにもネタは大事である。このときからボクはミホのブログのために四六時中ネタを探すこととなるのだ。 そうこうしている内に、賑わいのある店内がさらに混雑を極めてくる。水曜日にはあまり見たことがない光景だ。その賑わいのおかげで人気嬢のヘルプのために、ボクの指名嬢が貸し出されるという仕組みである。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加