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◆偶然と焼肉・・・
七月の茹だるような暑さったら酷いもんだ。
毎年暑くなってきているのはホントかもしれない。道路ではアスファルトが溶け出し、夕方にはゲリラ豪雨があちらこちらで襲来する。どこかしらおかしな世の中になってきたものだ。
そんなこともお構いなしに、ボクは今日も『エロチックナイト』に足を運ぶ。
・・・・・はずだった。
ところが、茹だる暑さに負けて冷房の中に浸りっぱなしのぐうたら生活に罰が当たったのか、昨日から咳が出て少々熱っぽい。
先日ミホからのメールで、「今週も来てくれる?」と入っており、「もちろん行くよ。」と返したばかりだった。
ところが、ゴホゴホと咳をしている輩が粘液の交換を楽しむところへ行ってはいけない。バレたら追い出されるかもしれない。ここは大人しく養生するしかない。薬局で薬を買って、咳が治まるのを待つしかない。
まあ、こんなこともあるよね。
ミホにはメールで「風邪引いちゃったから行けないよ」とだけ送っておいた。
翌週の水曜日、ボクは何とか風邪を治して出撃の準備に取り掛かる。
朝からシャワーを浴びて、髭をあたり、綺麗なパンツをはく。コロンはつけない。
ボクは自分ではわからないが、元々体臭があまりない体質らしい。ボク自身はこんなに匂いフェチだというのに。
やがて会社の就業時間が終わり、本日の出動を合図するチャイムがなる。今日もヒデちゃんには内緒でそっと会社を出てきた。
そこからはいつものように電車に乗って『エロチックナイト』へ直行するのだ。
風邪のおかげで前回の逢瀬から実に三週間ぶりの訪問となったのである。
「いらっしゃ~い。待ってたよお。」
例によって舌足らずな喋り方である。甘えたいのかなと思いきや彼女は普通にエスなのだから恐れ入る。ボクもエムではないので、彼女の波長に合わせるつもりはない。折角だから甘えてきて欲しいと思っているのに。女の子はその方が可愛い。少なからずボクはそう思っている。
「先週は来られへんくてゴメンな。せやけど、風邪はうつしたらアカンやろ。」
「そうやな。」
「もしボクの風邪がうつったらいつでも看病してあげるで。」
「ミホのオウチお父さんもお母さんも一緒におるんやで。」
「ボクは別にかまへんけど。誰?って聞かれたら、恋人ですって答えるやん。」
一瞬きょとんとした目をして動きが止まる。そして一瞬の間をおいて笑い出す。
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