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「ははははは、そんなんアカンに決まってるやん。」
「なんで?ボクが中年のおっちゃんやから?」
「そうやない、シンちゃんは見た目若いし。そうやないけど、アカンしおかしいやろ。」
もちろんそんなことはありえない想定である。しかし、そのありえない想定が面白い。
「今日は抱っこしても大丈夫?」
「したい?」
「したいに決まってるやん。」
「うふふ。」
そう言ってボクがミホの唇を引き寄せると、目を瞑って応えてはくれる。以前よりは積極的ではないけれど。祠の中の女神様もあいさつしてくれる。あんまり乗り気ではないけれど。これがミホの今のデフォルト体勢なのだろうか。あの気分がブルーになったときから少し変わっていた。
ボクとしては以前のように甘えながら絡み付いてくる腕や唇が愛おしい。最近は少しクールな態度で大人びたように見えるミホが少し遠い存在に見え始めていた。それでも、前回や前々回のこともあるので、一応否応なく体を預けてくれる。ボクも要求通りに応えてくれているミホに強引な要求をすることは出来なかった。
この日は、フリー客の顔見せに二度ほど席を離れたくらいで、後はずっとボクの側にいてくれた。
「そろそろ焼肉の想定してくれてもええんちゃう?」
「また今度な。」
「今度っていつ?来週の土曜日はどう?」
「なんもせえへんねやったら行ってもええで。」
「あのな、そんな想定はないで。肉を目の前に出されて喰らいつかん狼はおらんやろ。せやから、焼肉行くときは綺麗なパンツを履いてこなあかんで。」
「それやったら行かへん。」
「そうやな、それが正解やな。」
この会話をするのは何度目だろう。でもずっとこの会話が楽しいのもなぜだろう。
この日は可もなく不可もなくという感じで遊べた。それでも前回、前々回の不足を取り戻した気にはなれなかった。
もう少し深くミホに入り込んだ感じで触れ合いたい。スケベなおじさんの欲望は、少なからず彼女のテンションとは比例しないようだった。
所詮は店の嬢と客の関係。本来的にそれ以上でもそれ以下でもないのである。
しかし、とあるきっかけによってその一線がぐらつく。
七月のうだるような暑さは変わらない。それどころか朝から鬱陶しい熱気が陽炎となって我々を悩ませるようになってきた土曜日。
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