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とりあえずボクたちは地下に潜り、地下街の喫茶店に入る。
「二回も偶然に会うなんて奇跡的やね。今日はツイてるかな。宝くじでも買ってみようかな。恵みの雨ってこういうのを言うんやろうか。」
ミホもにっこり微笑んで、
「今日が休みやったらよかったのに。」
「なんで?」ちょっと意地悪っぽく聞いてみると、
「シンちゃんもそう思うやろ。」悪戯っぽく返された。
まさにそのとおりである。今日が休みの日ならこれからの時間は好きに使い放題なのに、ミホはもちろんのこと、ボクだってこれから会社へ戻って報告をしなければならない。
「ボクかてな、別に無理やりどっかへ連れ込んだりはせえへんねんで。せやけど、ボクみたいなんばっかりちゃうからアカンて言うてんねんで。」
「わかってるし。みんなシンちゃんみたいに大人しい人ばっかりちゃうの。結局シンちゃんはムチャできひん人やねん。それは最初からわかってるし。」
ボクたちの時間は、さっきまで雪崩のように落ちていた雨が音もなく走り去っていった気配を敏感に感じ取っていた。
「そろそろ行きますか。」
「そうやね。またお店に来てな。」
「明日は水曜日やで。」
「ホンマや。明日会えるん?」
ボクは少し意地悪な笑みを返しながら、
「ミホ次第かな。イチャイチャできるんなら行くで。」
すると今度はミホがすねたような仕草を見せながら、
「シンちゃんだけやったらええねんけどな、明日のお客さん。」
「そんなわけにはいかへんやろ。それに、お客さんがボクだけやったら、ミホのお手当て干上がってしまうで。」
「そうやな。」
納得したようなしないような。それでも、「明日は行くよ」と言って、その日は別れた。
正直なところ、何度も涼しい対応ならボクのテンションが下がってしまうのではないかと恐れていた。
そして翌日となる水曜日。
行くと決めている以上は、朝からちゃんと準備を怠らない。それがボクのスタイル。
全力で遊ぶ以上は全力で準備する。
しかし、この日はやりきらなければならない業務が少し残った。
いつもなら就業定時には仕事を済ませ、身の回りを片付けて、さっさと退社するのだが、どうしても仕上げなければならない書類があった。
おかげで『エロチックナイト』の前に着いたのが十九時ちょうどぐらい。いつもの時間より四十分は遅い。
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