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それでも、、自らの気持ちを抑制しながら土曜日を迎える準備を整える。
今は柔らかなミホの匂いが心地よい。
彼女の柔らかな匂いと肌の滑らかさは、ボクの冷静さをどんどん奪っていく。もうヒデちゃんには何も言えないほどのめり込んでいた。
果たして今度の土曜日。彼女にとって優しいシンちゃんでいられるのだろうか。
そろそろ暦は八月のページを残り少なくしていた。
しかしながら、岩に染み入るようなセミの声は、いつにも増して朝から厳しい唸り声にしか聞こえない。
職場では盆休みを終えた従業員たちが、滴る汗と戦いながら日々を過ごしている。ヒデちゃんも毎晩納涼ビールのお誘いを怠らない。
「シンちゃん、仕事終わったらビヤガーデン行こや。ちべたいのコキコキせんとやってられんで。オイラはいきなり大でいくかな。」
時間はまだ二時だというのに、もうすでに行く気満々だ。
「もしかして、ボクも行くことになってる?ボクは行かへんで、今日わ。」
「なんでなん?ちょっと付き合えや、話しあんねん。」
そうまで言われては断れない。このところヒデちゃんとは少し距離が置かれているのも事実である。致し方なく今宵はヒデちゃんとのビヤ納涼に付き合うこととなった。
テーブルに着き、ジョッキを注文していつも通りの乾杯を行うやいなや、ヒデちゃんはボクに彼の疑問を投げかける。
「シンちゃんな、最近付き合い悪いけど、なんかオイラに怒ってることあるん?」
突拍子もない質問内容に少し驚いた。
「ええ?何にもないで。ちょっとばかし新しい趣味を見つけたから、それに時間使いたいだけやねん。」
「ん?どんな趣味なん?オイラも混ぜてえな。」
新しい趣味を見つけたのは事実だし、それに時間を費やしているのも事実だのだが、まさか『エロチックナイト』に通っているなどとは口が裂けても言えない。
「言わんかったかもしれんけど、こないだクルマを乗り換えてん。ほんで、それでドライブしてるだけやし。そんなん一緒に行ってもつまらんやろ?酒も飲めへんし。」
我ながら素晴らしい言い訳だなと思った。
「ところでシンちゃん、キミ、あれから『エロナイ』へ行った?」
一瞬ドキッとするが、
「いや、行ってへんけど、どうしたん?なんで?」
「いや、オイラはたまに行くねんけど、オイラのオキニの嬢が、キミらしき御仁を見たって言うねん。」
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