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因みに、オキニとはお気に入りの嬢のことを言うらしい。
「その嬢が何でボクのこと知ってんの?ボクは会うてないよな。」
「へっへっへー。実はな、オイラのオキニの嬢にな、コレコレこんなヤツが時々尋ねて来んかって聞いてみてたんや。丁度、去年の社員旅行の時の写真あったからな。」
そういって手元のスマホで二人して撮影した写真を見せる。かなり顔がはっきりと写っている写真だった。
「そうするとな、目を見張ってフンフンってうなずくわけや。ほんで、見たことあるかって聞いたら、『ある』って答えよってん。これってどういうこと?」
かなり気まずいことになったもんだ。しかし、ヒデちゃんのお気に入りが誰だか知らないし、そんなに多くのヘルプ嬢と会った訳でもないので、ここはシラを切り通す作戦をとることにした。
「知らんで。行ってないもん。ヒデちゃんのお気に入りの女の子が誰か知らんけど、見間違いもええとこやで。それかボクによう似たお客さんがおるんやできっと。」
「あのな、オイラのオキニの嬢はな、見覚えのええ子やねん。一回見た客は忘れへん言うとった。オイラは彼女の記憶力を信用してんねんけどな。それに、オイラに黙って行ってたのを責めるつもりやないねん。あの子が見たっていうのがホンマやったら楽しいなと思ただけやねん。つまりはシンちゃんと一緒の趣味が持てるって言うことやんか。」
かなり釣ってきてる話だが、それに乗ってはいけない。ウソというのは吐き通して初めてその真価を発揮するものなのだ。
「あのなヒデちゃん。ほんでも行ってないもんは行ってないし。ウソ吐いてもしゃあないんちゃう?」
「そうかあ、嬢の見間違いかあ。残念やなあ。もうちょっとあの店のことで楽しい会話ができると思たのに。」
「ボクはああいう店が苦手やって言うてたの思い出してくれた?」
「そうやねんけど、このところシンちゃんの行動がなんか怪しかったからな、ほんで嬢にも探りを入れてみたんやけど。ヘルプの娘にも聞いてみたんやけど、シンちゃんのこと知ってる嬢はおらんかったしな。」
ここでボクの通い方が功を奏する。ボクの通う時間はそうそう指名被りしないので、ヘルプの嬢と接する機会も少ない。おのずとボクのことを覚えていられる嬢も少ないというわけだ。
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