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やがてテーブルに並べられる肉たち。鮮やかな赤と白のコントラストがボクたちの空腹中枢を刺激する。
「ミホが焼くん?」
「いいえ、お嬢様。やつがれが焼かせていただきます。」
「ヤツガレって何?」
「しもべの者が自分のことをへりくだって言うときの呼びかたやで。」
「シンちゃん何でも知ってるな。」
「エッヘン。てね。何でも知っておかんと若い女の子との話がもたへんからな。これはこれで苦労してんねんで。」
するとミホは少し意地悪そうな目でボクを睨む。
「そんなにあっちこっちで若い女の子と話するん?」
「ん?妬いてくれんの?嬉しいな。ボクがあっちこっちで若い女の子と話しするかどうかはミホ次第なんちゃう?ミホがちゃんとデートしてくれたら、ボクはあっちこっち行かんでもええんやけどな。」
「ミホはシンちゃんの恋人ちゃうし、妬いたりなんかせえへんで。」
「ちょっとは妬いて欲しいな。」
「めっちゃ妬けるし。」
「肉もそろそろ焼けるで、美味しいうちに食べや。」
そう言ってボクは、程よく焼けたタンをミホの皿へ移した。
「うまいタイミングやな。なんか知らんうちにシンちゃんに引き込まれていきそうやわ。」
「気いつけなあかんで。」
「大丈夫やシンちゃんやったら。ちゃんと気いつけてくれるやん。」
「タン、まだあるで。これを食べたらもっと饒舌になるかな。」
「ジョウゼツって何?」
「うまいこと喋れるベロって言う意味。」
「ホンマに何でも知ってるな。」
「なんか褒められると嬉しいな。今日はきっとええ日なんやな。」
タンもヘレも中々だった。あっさり系の肉を堪能したボクたちは、次にガッツリ系へとシフトしていく。
「次はカルビにいくのが普通かも知れんけど、ボクはここで先にロースを入れんねん。脂率は徐々に上げていく方がええからな。」
「シンちゃんグルメやな。ウチらはいきなりカルビとかいったりするけど、順番通り食べなアカンのかな。」
「若いうちは、いきなりカルビとご飯でええねん。ボクみたいに少し年を感じると、脂の少ない順番でいった方がええねん。」
実際ここ二~三年、めっきり肉を食べる量が減った。若いころはバラとハラミだけで充分に白ごはんを堪能できたのになあ。なんて思いながら、次はミノとセンマイを入れておこうとかその次にカルビにいこうとかを考えている。
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