◆偶然と焼肉・・・

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「それって、ボクを試してる?」 「うふふ、試されてみる?」 「ええけど、今度は少し覚悟がいるかもよ。」 「シンちゃんは口だけの人、絶対大丈夫。せやけど、ミホがかまへんでって言うたらどうする?」 「ボクの恋人になってくれるんやったら大歓迎やで。」 「それってどういう関係?セフレってこと?そんなんいやや。」 「あのな、体目当てで言うてるんちゃうで。ボクはほぼ独身やで。恋人にはなれんか?年が離れすぎてるから?」 ミホはしばらく間をおいてボクに問いかける。 「ほぼって何?」 「今な離婚調停中やって言うてたやろ、もうすぐ成立予定や。華の独身貴族やで。」 少しキョトンとした目でボクを見つめる。 「どう言うてええのかわからんけど、やっぱり恋人は難しいかな。でもシンちゃんやったらあるかもしれん。一緒におると楽しそうやし。」 「期待だけさせて後で知らんて言うパターンやな。」 「ミホそんなことせえへんで。シンちゃん次第やなって言うてんねん。」 甘い誘いに落ちる罠、典型的なパターンが簡単に予想される。正直なところ、夫婦の間柄がうまくいっていない状況にある現在、異性との新鮮な出会いや会話に飢えているボクにとって、ミホの笑顔や若い肌は最も危険なアプリケーションとなっている。 特に誘惑っぽい言葉には必然的に吸い込まれていく自分がわかる。 「半分は冗談やと思とくわ。後で振られて辛い思いすんのはボクやしな。」 「本気やないくせに。」 ミホは笑ってボクの首に腕を回す。 その流れに従うようにボクはミホの首筋に唇を這わせる。今日も彼女の匂いはボクの脳裏を心地よく刺激してくれる。 やがてボクは思い出したように話を切り出す。 「ほんで、イタリアンの店を探したらええねんな。」 「期待して待ってるし。」 「じゃ、今週の土曜日でええの?」 と、少し強引気味に日程を告げてみた。 「ええよ。何時?」 意外にもミホは平然として乗り気だった。 「夕方六時にY駅でどう?」 「ええよ。今度は夜やねんな。ちょっとエッチなこと考えてる?」 何だか少し腹のうちを見透かされているかのようだ。それでも気のないフリをしてウソを繕うよりも、本音を話すのがボクのポリシー。 「もちろん、下心がないといえばウソになる。一応、紳士のつもりやけどな、決めるのはミホやで。」
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