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「へへへ、やっぱりな。あの店は良かったもんな。シンちゃんでも思い出したら行きたなるほどええ店やっていうことやんか。オイラもホッとしたわ。」
「なんでなん?」
「オイラとオキニの会話がすれ違っとったから、これで修正できるやん。ところで、シンちゃんのお目当ては誰なん?」
「内緒や。あんまりヒデちゃんのオキニの嬢さんから、その娘のいらん情報を聞きたないし、ヒデちゃんもヘルプで会うたら気まずいやろ?もう行くかどうかもわからへんし。」
「オイラは気まずないで、だってオイラはヘルプの嬢さんとは話しかせえへんからな。ん?気まずいって思うってことは、シンちゃんはヘルプの嬢にもチューとかしてるな。」
「してないって。ヘルプの嬢さんにもそんなんしてええの?指名してるからエエって言われてたと思うんやけど。」
どんどん会話が秀雄のリードに導かれている。進也もシマッタと思いながらも、もう引き返せないところまで来ていた。
「ホンマはアカンねんけど、嬢が許せばええのと一緒。それか、シンちゃんがその嬢に焼き餅を妬かれてるんちゃうか。結構、ええ線いってるんちゃうん。」
進也もそれほど多くのヘルプ嬢に会っているわけではなかった。ミホが抜群の人気を誇っているなら、そんなこともあったかもしれないが、まだ固定客も多くなく、早い時間に行っているので、ほとんどの時間を二人だけで過ごすことが多かった。間違いなくヘルプ嬢には手を出していない自信もあった。
「オイラのオキニの嬢はマヤちゃんて言うねん。今度会うたらよろしく言うといてな。週に五日は出勤してるはずやし、いつかはヘルプでも会うかも知れんで。」
「もし行ったらな。」
何気に答えたつもりだったが、内心は色んなことを見透かされた感じがして、おかげで一気に酔いが冷めていく気分だった。
しかし、このときの秀雄の予言は、後日に現実化するのだが、彼女とも顔見知りになっていたことが数ヵ月後には功を奏することになるのである。
「いやあ、今日はええ気分晴らしになったわ。ええから、今日は一緒に行こな。」
秀雄にとってはいい仲間ができたという気分。打って変わって進也にとっては秘密を握られた気分。全くもって異なる感情のままに肉を焼く。
「ゴメンやけど、今日は行かへんで。そんなに余裕のある金もって来てないし。ここの御代も借りなあかんかもしれんのに。」
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