18人が本棚に入れています
本棚に追加
というのは言い訳で、今宵はミホの出勤日に当たっていない。今日は金曜日である。金曜日に出勤していない嬢は限られているので、およそそれだけでミホの正体があからさまになってしまう。進也はそれを恐れたのである。
そんなことは気にも留めず、秀雄はさらに進也を誘う。
「金やったらたんまりおろして来たで。奢るとは言いかねるが、3セット分ぐらいは借金できるで。」
「ヒデちゃん、ヒトに借金してまで行く店やないで。やっぱり今日は帰る。」
「そうかあ、残念やなあ。今度はちゃんと行く前に誘うから、ちゃんと軍資金用意しといてや。」
「あんまり期待には応えたないけどな。」
そこへにょっきりと顔を出してきた親方。
「何の話をしてんねん。シンちゃん、だいぶ渋い顔してるで。仲良うしいや。」
「別に喧嘩してる訳やないで。シンちゃんの新事実を発見して、オイラが勝手に喜んでるだけやねん。シンちゃんはちょっと気まずい感じかな。」
「なんや、シンちゃんの秘密でも見つかったか。」
「ああ、まあでもそんなに秘密でもないかな。シンちゃんも男やったって言う話や。親方には縁のない話かもしれんけどな。」
秀雄の得意顔はまだまだ続く。
「シンちゃん、黙ってんとなんか言い返しや。」
親父さんは進也の肩を持つ。
「別に脅されてるわけやないよ。ちょびっと秘密にしてたことがバレただけ。バレたらしゃあないぐらいのことやし。」
「ほんならオイラはこれから行ってくるわ。親方、お勘定して。」
なんだかんだで二人前のホルモンをビールと共にすっかりと食べきった二人は、明暗の分かれた顔で店を出た。
そして、進也は帰路へ秀雄は店へと足を向ける。
進也にとって少し憂鬱な感じが残る飲み会だった。
思えば今日は金曜日。明日は待ちに待ったミホとの二回目のデートである。
まさか、そんなことまでは秀雄も彼のオキニ嬢も知る由もないだろう。
その日は朝から軽快だった。
前日のビールは少量だったし、ホルモンだって秀雄ほどは口にしなかった。と言うよりも話している途中からドンドンと食欲が落ちていたことによるものだ。
最後は二人別々の選択肢を引いた。それだけは満足していた。
今日のデートは夜からである。彼女は土曜日の昼も仕事なのだろうか。まだ彼女の昼間の仕事のことを詳しく聞いていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!