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職場にはあまり多くの男性がいないとまでは聞いていたが、彼女が派遣社員であること意外は何も知らなかった。
彼女の日常エリアと進也の日常エリアでは、淀川を挟んで南北に分かれている。淀川にかかる橋を渡らないと、二人の日常エリアは繋がらない。
今夜の待ち合わせは大阪市内なので、二人は淀川の川下にある中州近くの駅で落ち合うことになっている。そう考えると少しロマンチックな構図だ。
太陽が高く昇っている時間帯、進也は今夜の店を確認すると共に、二人だけの二次会を想定していた。
おしゃれなバルか渋い感じのショットバーか、選択肢はいくつもあった。
少し色っぽいことも考えたが、なるべく期待はしていない。
とはいうものの昼過ぎごろから落ち着きがなくなっていくのがわかっていた。何かあれば時計を見て時間を確認する。一人暮らしであるが故に、そのみっともない姿を誰に見られるわけではないが、妻と別居していなければ、あっという間に不振な姿に映ったことだろう。それほどまでに、進也の期待は高まっていたのである。
九月とはいえ、昼間の気温は三十度を超える日が続く。まだまだエアコンなしでは、室内を快適な空間に保つことはできない。
さらに喉の渇きもフォローすべくであるが、まさか今日は昼間からビールを煽るわけにもいかないので、ローカロリーな炭酸飲料で喉を潤すしかなかった。
エアコンがついているとはいえ、汗ばむ温度には違いなかったので、夜のデートのことも考えて二度三度とシャワーを浴びる。
もちろん、髭を整えて清潔にしておくことも忘れない。進也はそういったところは昔からマメな男なのである。
やがて夕方を迎え、六時Y駅を目指してアパートを出る。
夕方になると少し涼しげな風を感じるかも。夜にはひんやりとした空気がときおり頬をすり抜ける。
進也は六時の少し前に待ち合わせ場所に着いていた。ホントに来てくれるのだろうか。そればかりを気にしていた。
「シーンちゃん。うふふ。」
割りと時間きっかりに姿を見せたミホ。案外キチンとした娘なんだなと感心する。
「ホンマに来てくれたんやな。」
「ん?なんで?」
「だって夜やし。オウチの人にはなんて言うて出て来たん?」
「お友達とご飯食べに行くって。ホンマの事やろ?」
確かにそれが一番適切であり、現実の話だ。
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