◆三人称の視点・・・

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やがてテーブルの上の料理があらかた無くなり、デザートであるジェラートの出番が訪れる。つまりは食事デートがそろそろ終わりを告げるということ。 時計を見れば時間はまだ午後八時前。 「お嬢さん、もうお帰りですか。もしよろしければ、もう少しお付き合いしていただけませんか?」 「えらい丁寧やな。どこ行くん?」 「そうやな、バルがショットバーでも行かへんか。」 「ホンマはガールズバーとか行きたいねやろ。」 ミホはちょっと意地悪な目線をボクに向けた。 「ボクはそんなとこ行ったことないで。ミホに会いに行くときでも飲んでないやろ。カラオケでもいくか?」 「ミホあんまりカラオケ好きやない。でもお腹も一杯やしな。」 「なんやったらボウリングでもしてみるか?」 少し変則的なプランを提案してみた。すると、 「それ面白そうやな。ボウリングなんて何年ぶりやろ。」 意外な反応に少し驚いたが、これで二次会の会場はボウリング場と決まった。 少し歩きながらお腹を軽くしていく。並んで歩く二人の姿は不倫の匂いがプンプンするカップルに見えるだろう。もちろん手をつないでいることは言うまでもない。 進也は若い女の子を連れて街中を歩くことに少なからず優越感をもたらしていた。夜の喧騒を意気揚々と歩くのは何年ぶりだろうかと思う。 「あそこなんかどう?」 進也が指差す方向に大きなボウリングのピンの看板が見える。 「なんかワクワクするなあ。」 二人は専用のシューズを借り、受付を済ませてボールを捜す。進也も実はあまり得意ではないのだが、少しはいいところを見せたいとも思っていた。 「ほなボクからな。」 何年ぶりかの第一投は、中央ピンをわずかに外れて左隅の三本だけを倒す結果となった。二投目は逆に右隅の三本を倒し、結果的に中央の4本が残った。 「はははは、シンちゃん面白い。よっぽど性格がひねくれてんのんちゃう?」 そういうミホの腕前はどうだろう。 ミホの投じたボールは一番ピンに向かって一直線に進んでいく。 やがて軽快な音と共に多くのピンが倒れて、一番端っこの十番ピンだけが残った。 「おしい。」 二人で声を合わせながら目線も合わせる。 二投目も丁寧に投じたボールは、残りの一本を綺麗になぎ倒していった。 「ミホ上手やな。あの一本を倒せるなんてすごいで。」 「たまたまやけどな。」
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