◆一人称再び・・・

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ボクはニッコリと微笑んでミホの首筋に唇を這わせる。今のボクにとってミホはただ一緒にいたい存在である。エッチなことなんてできなければできないでそれでもいい。そう思っている。 「ボチボチ次のデートの約束できるんかな。そろそろ十月やし、紅葉とかもあるで。」 「人が沢山集まるとこは面倒くさいな。それよりも野球見に行かへん?そろそろ夜は涼しなるやろ。」 ちょっと驚きのリクエストだ。 「ミホ、野球見るん?ドームやったら空調あるから、夏でも秋でもあんまり変わらんと思うけど、もしかして甲子園?」 「行ってみたい。夏の高校野球ちょっと見てん。めっちゃ暑そうやったけど、ナイターは綺麗そうやったから、いっぺん行ってみたい。シンちゃん詳しそうやし、一緒に行けたらええなあって思ってた。」 そう言われて嬉しくないわけもない。 「じゃあ、いつ行く?今週?来週?週末?平日?土日やったらデーゲームの可能性もあるで。平日やったらほぼナイターやと思う。」 「ほんなら平日の夜。来週の火曜日か木曜日。」 割りと気軽にこたえるミホ。 「随分と約束するんが平気になってきたな。夜やで。しかも隣の県まで行くんやで。」 「シンちゃん、頼りにしてるし。」 ニッコリ笑ってボクの膝の上に乗ってくる。あとはそのまま胸の膨らみに唇を這わせていくだけである。もう何も答える必要がない。 やがて場内コールがボクからミホを取り上げる。 =ミホさん八番テーブルごあいさつ= ミホは身支度をしてボクの席を離れる。離れ際に優しく言葉を言い残して。 「フリーやから、すぐ戻ってくるし。」 この日は人気のヒトミ嬢がいないこともあり、ボクの席を離れるのはフリー客への顔見せだけである。若い嬢は指名客があっても、次の固定客確保のためにフリー客へは頻繁に回される。可愛いミホならば店としてはなおさらであろう。そんな今宵のヘルプに来てくれた嬢はチヒロ嬢とユカリ嬢、そしてマヤ嬢だった。チヒロ嬢はミホよりも二ヶ月ほど後に入った期待の新人。接客もかなり積極的にこなしているようだ。ボクの所でもその積極性は変わらない。ユカリ嬢は少し年配のおねいさん。それでもボクよりは年下なのだから、ボクには違和感なく話ができる。やはりおねいさんだけあって、対応の仕方もかなり大人だ。たまにボクにはコツンと忠告してくれる。幻想の世界と現実の世界をちゃんとわかってないとダメだよってね。
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