◆独身・・・

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◆独身・・・

ボクが自分の恋を自覚してから数日後、新しい月に変わる。 そして月が変わって早々に弁護士から連絡が入っていた。どうやら離婚の調停がうまくいったようだ。この時からボクは晴れて独身となったのである。 甲子園デートは独身になって初めてのトライアルとなる。約束は阪神梅田駅中央改札前午後六時三十分。 ボクは会社の仕事を早めに終えると、早足で待ち合わせ場所へ向かっていた。ミホは以外にも早めに到着しており、今や今かとボクの到着を待ちわびていた。 やがて姿を見せるボクの姿を見つけて手を振ってみせる。 「おーい、ここやで。」 「早かったなあ、めっちゃ待った?」 「ええねん。今日はミホ暇やったし、買い物とかもちょっとして来たし。」 ミホの右手には小さな買い物袋が握られている。 「邪魔になりそうやからコインロッカーにでも入れておく?」 「ううん、大丈夫や。それよりも甲子園でなんか買うたら、この袋に入れられるし。」 この日の試合開始時間は午後六時三十分。試合はすでに始まっている。急いで電車に乗って甲子園を目指す二人。 「今日は阪神とどこの試合?」 少し興味深げに尋ねる。 「阪神対中日や。ボクはどっちのファンでもないからどっちも応戦せえへんで。その代わり、純粋に野球見られるし。ミホは阪神ファン?」 「ううん、あんまり詳しくないねん。シンちゃんはどこのファンなん?」 「ボクは昔の阪急ファン。今は特にこだわって見てないわ。そうやな、しいて言うならミホのファンかな。」 「うふふ、ミホは野球チームちゃうし。」 そんな会話を電車の中でしながらも、もちろん手をつないでいる。そして思い出したかのようにミホに話し始める。 「こんな所で言うことちゃうかもしれんけど、ボクの離婚が成立して、無事に独身になったで。もう不倫なこと無いから安心してな。」 ミホは困ったような顔をして首をかしげながら、 「何を安心するん?逆にシンちゃんが危険人物になるってことちゃうん。」 言われてみればそうかもしれない。ボクにとっての不倫と言う外壁がなくなったことにより、ミホにとっては警戒しなければならない要因が増えたに過ぎない。 「そうか、気づかんかった。でも今までと変わりない付き合いでええで。店にもちゃんと行ったげる。」 「でも少しドキドキすんねんなこれからは。」 そんなセリフを言われて逆にドキドキするのはボクの方だ。
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