◆独身・・・

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野球観戦もさることながら、ミホとの会話も楽しまなければデートの意味がない。 「とりあえず手えつなぎながら野球見よか。」 「ええ?デートみたいやん。」 「ええ?デートちゃうの?」 「うふふ、そうやな。デートやな。」 ミホよりは少し野球に詳しいボクは、それぞれの場面においての簡単な解説をするとともに、ルールなどについても必要に応じて説明した。 試合はシーソーゲームの末、阪神の逆転勝ちで沸きあがる歓声が球場全体を弾けさせた。 「ルールとかはわからんけど、ライブ感があってええなあ。また連れて来てな。」 「今度はドーム球場にしよか。ほんなら雨が降っても傘はいらんし。」 今宵も雨が降ったわけではなかったが、野球観戦をしていて雨に降られるのはたまらないからね。 今夜の試合終了時間は、白熱したシーソーゲームのおかげで午後九時三十分を回っていた。木曜日という平日でもあり、あまり遅くまで彼女を拘束するには憚れる時間帯に届こうとしている。 「めっちゃ遅くなったな。梅田までは送ってあげるな。」 「うふふ、また手をつないでやろ?」 なんていうほどロマンチックな帰路にはならない。白熱したままの熱狂的な虎ファンたちが梅田行きの電車にわんさか乗り込んでくる。途中で帰るファンがいなかったこともあり、駅の改札口はもみくちゃ状態だ。 「どうする?この猛烈な混雑に突入する?それとももう少し人がいなくなるまで待つ?」 「どっか喫茶店とかあるかな。マクドでもええで。こんなぎょうさんな人だかりの中に突っ込んで行くのはちょっと嫌かな。」 駅前なので、ちょっとした飲食店ならいくらでもありそうだ。但し、のんべ専用の店が多いとは思うけどね。 そう言いながらも駅の裏路地で手頃な喫茶店が見つかったので入ってみる。昔ながらの雰囲気を醸し出す感じのいい店だ。昭和生まれのボクにとっては何だか懐かしい趣でもある。 二人で向かいの席でホットコーヒー。ビールを何杯かお代わりした後の体に一息入れるにはいい頃合のカフェインだ。 「ボクが学生やったころは、喫茶店といえばみんなこんな雰囲気やったなあ。テレビゲームとかが置いてあって、みんな夢中になってたなあ。」 「シンちゃんもゲームしてたん?」 「ボクはあんまりせんかったなあ。ゲームよりも読書に夢中やったし。」 「ホンマに?何の本読んでたん?」 「エロ本に決まってるやん。」
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