◆再び三人称の目線・・・

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そして思い出したように進也はミホの首筋に唇を這わせる。そしてそこに漂う匂いを存分に彼の鼻腔の奥深くへ充填させていた。 進也はまだ少し戸惑っていた。このままズルズルと中途半端な関係を続けていくことを。客観的に見れば、キャバ嬢が客の気を引くために安全な客と店外デートをしている光景にしか映らない。しかし、進也としては少なくとも友人以上の関係を望んでいる。 ミホはと言うと、はっきりとは言うはずもないが、客としての付き合いだけなら進也の気持ちが醒めていくかもしれないと思い始めていた。だからこそ延長をねだった夜はミホにとってもいいきっかけになっていたのである。 店でのミホは充分過ぎるほど進也に尽くしてくれていた。だからこそ、次のデートでは彼女の気持ちを聞いてみようと決心した。そろそろ潮時が近いかもと予感しながら。 「どうせならMSLに行かない?それも空いてる平日に。一日ぐらいなら有給とれるし。」 MSLとはムービースタジオランドと言って、映画会社がバックアップしている大規模遊園地のことである。 「ええよ。再来週の火曜日か木曜日でどう?」 「じゃあ、善は急げっていうことで火曜日。」 「その次の日は水曜日やで。お店にも来てくれるん?」 「それは火曜日次第かな?」 ちょっと思わせぶりなスケジュールとなるので、進也も返事は少し濁した。もちろん、財布との相談もあるのがリアルな事情。 やがて進也の時間は幕を閉じる頃合となり、今宵もミホに見送られる。 「再来週の火曜日。楽しみにしてるな。」 「うん。JR大阪駅東改札口に九時半ね。シンちゃんも忘れたらあかんで。」 こうして進也とミホの三度目の店外デートが約束された。結果的に二人の未来に大きな影響を及ぼすデートとなるのである。
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