◆告白・・・

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◆告白・・・

その週の金曜日。 会社では相変わらず詰まらない会議と単純な作業に明け暮れていた。進也も秀雄もただ淡々と与えられた使命を果たしているだけの業務である。 「それはそうとシンちゃん、とうとう離婚できたらしいやん。詰まらん仕事の憂さ晴らしも兼ねて、お祝いにぱあーっと行こうや。」 「そうやなあ。でもあんまりお祝いって言うほどのことでもないで。実際、なんか淋しい風が吹いてる様な気もするし。もともと別居してたから家に帰っても独りやったけど、事実上も独りになると、それはそれでかなり涼しいで。」 「そんだけ冗談言えるんやったら大丈夫やろ。祝いやから、今日は『エロナイ』の分まで奢ったるさかい、仕事終わったら出口で待ち合わせやで。」 二次会の分まで振舞おうというのだからお大尽なことだと進也は思った。しかし今宵はミホの出勤日ではない。「今日は絶対に行かない」そう思っていた。 毎度の事ながら彼らのアフターファイブパーティーは、まずは焼き鳥がデフォである。そして次にホルモン屋へ流れ込むのがいつものパターン。焼き鳥屋は毎回店を変えるが、ホルモン屋は例の親方がいる店である。 この夜もあっという間に例の親方の店に雪崩れ込んでいた。 「なあシンちゃん、折角独りになったんやから、もっと独身を謳歌したらええんちゃう?あっちでもこっちでもナンパし放題やんか。」 秀雄は他人事だと思っているせいか意見も軽い。 「ボクはそんなナンパとかしたことないし。それにやっぱり独り身は淋しいで。」 そんな会話に親方が入り込んでくる。 「ヒデちゃんにはわからんかも知れんけど、なんやかんやで一人は淋しいもんやで。ワシも若い頃に最初の女房と別れたときは、なんや胸の中に穴が開いた感じやったからな。」 「ヒデちゃんも別れるって言うてたよな。ボクの離婚がうまくいったら。」 以前に秀雄がそう言っていたことを思い出した。 「そうやな。シンちゃんが頼んだ弁護士紹介してくれたら手続きしてみよかな。」 すると親方が割って入る。 「ヒデちゃん、お前さんとこは上手くいってるんやろ?無理して別れんでもええんちゃうんか。シンちゃんのところは元々相性が合わんかったんやで。悪いことは言わんから止めとき。」 「ホンマやで。無理して別れる必要ないねん。結果的になんや淋しいだけやし。子供が家を出てから余計にやな。」
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