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「今日は行きたないって言うてんねんけど、断る理由を探してるとこやねん。何かええ案ないかな。」
進也はそうなるまでのちょっとしたいきさつを話してミホに助けを求めた。すると、しばらく間をおいて答えが返ってきた。
「今から彼女のところに行くって言えば。なんやったら少しデートしてあげよか。」
進也が腕時計を見ると現在時間はそろそろ二十一時を指そうとしていた。
「今から出てきたら遅くなるで。それに帰りはもっと遅い時間になるやん。」
「うふふ、心配してくれるんやな。ほんならシンちゃんがK市まで来てくれる?」
ミホの答えと併せての妙案が進也の脳裏に浮かんだのはそのときだった。
「ええこと思いついた。デートは再来週の火曜日でええよ。でも今日は会うっていうことにしとくわ。ほんでもって今日は帰ることにするし。」
「ようわからんけど、大丈夫?」
進也の脳裏に浮かんだ考えとはこういうことである。お目当ての女の子はいる。そして今からその彼女に会う。その彼女がお店の女の子だという必要はない。結果的に冷やかされることにはなるが、正体を明かす必要はないはずだ。
「いいタイミングでの電話をありがとう。ほな再来週の火曜日に改札口で待ってるし。」
「うん。ミホも楽しみにしてるし。」
そんな会話を交わしてから、絶妙のタイミングでかかってきた電話を切った。
電話を終えて秀雄の元へ戻ってくる進也。ちょっとテレながらも話の切り出し方を思案している。
「あんなヒデちゃん、ちょっと前に知り合った女の子からの電話やねん。今からちょっとしたデートの約束できたから先に帰るわ。」
「なんやそれ。いつからそんな面白い遊び覚えたん?最近時々早く帰ってたのはその彼女と会ってたってこと?」
秀雄も親方も突然の展開に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「シンちゃん水臭いな。そんな女の子がおるのなんで黙ってるん?」
秀雄は少し怒ったような口調で進也に尋ねた。
「たまたま駅で困ってるところを助けてあげた子でな、まだ一回食事しただけの女の子やからどうなるか解らんかったし、ちゃんとなってから報告しようと思てただけ。ホンマにまだ今からどうなるかも解ってないし。」
「せやけど、今からデートやろ?そろそろイケるんちゃうん。」
秀雄も親方も急展開の話に興味津々だ。
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