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「アカンでついてきたら。まだそんな関係になってないんやから。デート言うたってたまたま向こうも飲み会やったし、近くにおるみたいやからコーヒーでも飲みに行かんかっていうお誘いだけ。ただの財布代わりやし。」
「いくつの子?かわいいの?どこの子?もう付き合うてんの?」
秀雄の話は、進也に向けての矢継ぎ早の質問攻勢に変わっていく。
「ちゃんと交際できるようになったらヒデちゃんにも親方にも紹介するし、あんまり囃し立てんといてくれるかな。」
「シンちゃんも本気やったらちゃんと交際しいや。ヒデちゃんみたいに遊びまくっとったらアカンで。がんばりや。」
いつのまにか親方は進也の応援団へと鞍替えしたようだ。
「親方、ほんならお勘定してんか。シンちゃんはデート、オイラは『エロナイ』へ行って遊んでくる。そういうことやな。」
「ははは、ええコンビやな。シンちゃん、ちょっとはヒデちゃんのこういう遊び心も学ばなアカンねんで。真面目だけじゃ女の子にはモテんで。ワシが若い頃にはなあ・・・。」
と親方が話し始めると同時に秀雄が席を立った。
「その話は前にも聞いたで。シンちゃん、出よ。早うその子のとこへ行ってあげ。その代わり今晩の結果は月曜日にちゃんと聞かせてもらうで。」
進也と秀雄は少し喋り足りない親方を店に残して暖簾を後にした。秀雄は『エロチックナイト』へ向かう道のりを、進也は大阪駅へ向かう道のりを目指して店の前で別れた。
もちろん進也の行動は全てフェイクであり、秀雄の姿が見えなくなると、踵を返して自らの帰路へと着くのであった。
翌週の月曜日の朝、会社の廊下でいきなり肩を叩かれる進也。
「おはよー。金曜日はあれからどうなった?ちゃんと聞かせてくれる約束やったよな。」
振り向けば秀雄のにこやかな顔がそこにあった。
進也も覚悟していたかのように想定していた物語を語り始める。
「あれから彼女と会うてな、コーヒーだけ飲んでそのまま帰った。ボクも彼女もアルコール入ってたし、ちょっとだけ近況報告してすぐに帰ったで。時間も遅くなるし。」
秀雄の顔はこれでもかというぐらいの呆れ顔になっている。
「アホかシンちゃん。何のために彼女がお前に電話してきたと思てんねん。ちょっと酔うた気分で抱いて欲しいからやないかい。」
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