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「そんな誰も彼もがヒデちゃんが付き合うてきた女の子と同じやないねん。ちょっと悩みごとがあって、ボクに愚痴を聞いて欲しかっただけやん。そのうちもっと仲良くなれると思ってるから。」
進也もいい加減なことを喋っている自分に我ながらと呆れ顔。
「うまいこといったらちゃんと紹介してや。」
「うまくいったらね。」
今のところ進也はミホを秀雄に紹介するつもりはない。きっと店で何度か顔を合わせているに違いないと思っているからである。
「ところでその彼女の写真とかはないん?」
秀雄は興味津々で聞いてくる。喰い付いたら離さないほどの勢いで。
「どこに住んでる子?かわいいん?おっぱいとかシンちゃん好みなん?」
まるでどこかの芸能レポーター並の取材攻勢だ。喰い付き方はスッポンといい勝負かも。
「まだ名前だけしか知らん。遊びやないと思てるから、まだそっとしといてな。」
「ちぇっ、もう少しいじれると思ったのに。せやけどシンちゃんも抜け目ないな。見直したで。オイラにもおこぼれ回してな。」
「ああ、ボクとおんなじように離婚できたらな。」
「こっちは遊びでええねんから、堅く考えたらアカン。友だちの友だちはみんな友だち。その精神が世の中を救うねん。」
「何を訳のわからんこと言うてんねん。さあ、仕事するで。」
いつも同じ仕事をしているわけでもない二人。それぞれの持分をこなすために別々の部署へ向かった。
進也はほくそ笑んでいた。
昨日といい今日といい、とりあえずは上手く秀雄の攻撃をかわせたと思っている。
それでも今週末にはどんな手段でお誘いがあるのか考えておかねばなるまい。独り身になったとはいえ、若い頃の自由さはない。自分自身がすでに中年の域に達している自覚もある。そんな環境下で秀雄のように自由気ままに時間を謳歌できない自分がもどかしい。進也はそんな性格の持ち主なのである。
さて、ミホとのデートを翌週に控えた進也は、来週の火曜日の有給願いを提出していた。普段からあまり有給を使わない進也には、いとも簡単に許可が下りる。これでスケジュールの管理は万端だ。仕事はピークを過ぎたので、来月のイベントの用意だけをしておけばよい。MSLのチケットも予約しておこう。これもネットで簡単にできた。便利な世の中になったものだと思う。
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