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進也にはミホの問いかけに答える余裕がない。そして驚愕の時間が始まるのである。コースターがゴトゴトと動き始め、一気に加速する。「ぐぐぐぶぶぶ」と言葉にならない声というか音を発する進也に対して「キャー」っと楽しそうにはしゃぐミホ。
やがてゴール地点に辿り着いたときの進也の顔には、大いなる疲労の形相だけが浮かんでいた。対照的な二人の顔がそれぞれの感情を物語っている。
「ミホちゃん、お願いやから少しインターバルをもらえる?」
「シンちゃんおもろいな。たった一分ぐらいでこんなに人って変わるん。でも次の乗り物に並んでるうちにインターバル取れるし、次に行くで。」
今日のミホはいつもよりエスっ気が出てるかも。やたら楽しそうだ。
二人はその後も高いところから落ちたり、グルグル回ったり、ブルンブルン揺られたりする乗り物を乗り続けた。
ランチも済ませて、流石に進也も終盤ごろには慣れてきたか、乗りながら笑顔が見られるようになった。
「ねえミホちゃん、乗り物はそろそろ慣れてきたし、一つ思いついたことがあるねんけど。」
「ん?なに?」
「お化け屋敷にまだ行ってないやんなあ。」
「・・・・・・・・・。」
ミホはいきなり黙ってしまった。
「もしかしてお化けは怖いん?」
「行かなあかん?ミホ、お化けは怖い。」
今度は進也がエスっ気の顔に変わる。
「ボクかて散々恐ろしい目に会わされたからなあ。手えつないだけるから一緒に行こか。」
「許してくれへんの?」
「そうやなあ許されへんなあ。」
ミホの目に涙が浮かんでくる。
「ずるいな。女の子の最終兵器使ってくるなんて。」
「ううううう、怖いもん。シンちゃん絶対にミホの手、離したらイヤやで。」
これはいわゆるOKの合図だ。進也は一目散にお化け屋敷の方向へ歩き出した。
本来ならばシーズンオフのアトラクションかもしれないが、ここでは年中開催しているみたいである。ここのお化け屋敷は相当怖いことで有名らしいので、それなりに人気のアトラクションなのだ。従って、コースター同様に十分程度は並んでから入る。
「ボクがずっと手を握っててあげるからな。」
「うん。」
ミホのか細い声が、進也の男としての部分をたぎらせる。
やがて順番が来て二人で中へ入って行った。
暗い照明とトーンの低いBGMがそれなりの雰囲気を醸し出していた。ミホは入るなり進也にしがみつき、大声を上げて喚きだす。
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