◆告白・・・

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不倫的な問題がなくなった現在、進也を悩ませているのは一般論との戦いである。ともすれば親子程とは言わないまでも、相当な年の差がある若い女の子と、すでに中年の域に達している冴えない自分とを並べてみたとき、彼女が本気で自分に恋してくれるはずもないだろうと思っていた。普通に考えればそれが正解である。 従って、進也は自分自身が恋に落ちることを恐れていた。いずれ振られるのが目に見えている恋など自分を傷つけるだけだと。 進也は「水曜日に行くよ」とだけ返信したものの、どうせなら思い切って自分の想いを打ち明けてみた方がいいのかも。そんなことを考え始めていた。そして決心するのである。 「行くよ」と宣言した水曜日。秀雄は隣の和歌山県まで出張に行っている。進也の『エロナイ』行きを邪魔するものはいなかった。唯一、課長だけが残業の材料を持ってくる可能性はあったが、課長は課長で別の接待に忙しいようだ。 就業時間を終えると、進也はいつものように早々に会社を後にして足早に駅へと向かう。ここ数ヶ月の間に何度かデートを重ねてからというもの、進也が店に通う足取りには多少なりとも変化があるように思われる。それは楽しい思いと不安な想いが頭の中で交差しながら歩くことが多くなったからではないだろうか。
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