こたつ

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 晴吾は村の厄介者じゃ。酒癖が悪く女房に逃げられ、何度も警察の世話になっとる。そんな奴のガキを、親類がちゃんと大人になるまで面倒を見てくれるじゃろうか……?  隣の部屋では雪花が遠慮を知らず、うどんをすすりあげとった。……もしわしが捕まったら、誰があの子を守るんじゃ。わしは雪花の傍らで息吹く火鉢の炭に目をやった。くたびれて所々白うなった炭は、まるで雪花の命のようじゃった。 「邪魔するぞ!」  がなり声が聞こえたかと思うと、乱暴に戸が引かれ、土間に晴吾が入ってきた。村の連中に雪花の居場所を聞いたんじゃろう。晴吾は酒が入り見るからに気が立っとった。  わしは壁と箪笥の間に猟銃を隠すと、奥の部屋から顔を出した。わざとらしゅうならん程度に下手になって声を出す。 「どうかしたんか?」 「どうかしとるんはそっちのほうじゃ! この人さらいが!」  晴吾は体格こそないが荒くれ者じゃ。獲物でも隠し持っとったら、年寄りの力じゃ相手にならん。わしは畳に片手をつくと、晴吾に許しを乞うた。 「すまんかった。すまんかった。あんまり雪花が寒そうにしとるんで飯を食わしてやりたかったんじゃ」 「とんだ言いがかりじゃのう。米も炊けんやつに躾をしただけで説教か!」 「あぁ、あぁ。わしが悪かった、許してくれ。上等な酒が一升あるけぇ、それを飲んで気を沈めてくれんか?」     
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