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「ふん。しょうがないのぉ。早よう用意せぇ」
酒に目がない晴吾は居間に上がり込むと、火鉢の前に座った。やはりまともな男じゃぁ無い。怯える雪花を見つけると、その顔に蹴りを食らわせた。
「なんじゃその目は! 誰とでも寝るお前のかかあと同じ目をしやがって!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、うちが悪いんです、ごめんなさい……」
雪花は考えることもせずただただ詫びた。その姿は不憫で仕方がなかった。
「まぁまぁ、わしのうちじゃけぇ」
わしは晴吾をなだめると、雪花を抱き雪の降る家の軒先まで連れ出した。
「えぇか、ちょとばぁ辛抱しとれ」
わしは泣きじゃくる雪花の頬をなでると、半纏の紐を固く結び直してやった。
雪花を奥の部屋に寝かすこともできたが、晴吾はどうしょうもないアル中じゃ。雪花が見えるところに居れば、難癖をつけて暴れだすことは目に見えとった。
この男は殺さにゃぁならん……。
わしは沸き立つものを腹のなかに押さえ込むと、土間の奥から一升瓶を持ってきた。
「どうぞ。飲んでくだせぇ」
晴吾は湯呑につがれた酒を一気に飲み干すと酒臭い息を吐いた。
「ぷはぁ、生意気な酒じゃのう」
「まぁ、もう一杯」
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