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晴吾に愛想笑いをして見せると、また湯呑に酒をついだ。晴吾は機嫌良く二杯目の酒を飲んだ。傍らの火鉢のなかでは炭がチロチロと燃えとった。
「今日は特別、寒いけぇ、こたつを用意しちゃるから待っといてくれ」
わしはそう言うと隣の寝間から、机ごと豆炭ごたつを持ってきた。
わしは慣れた手つきで布団をめくると台の裏についた燃焼器を引き抜き、その蓋を開けた。そこへ火鉢のなかで炙った豆炭を乗せると、もう一度、機械の蓋を閉じ、こたつ台の裏に差し込んだ。暗がりのなかに豆炭が燃える嫌な匂いが広がって行く。誰にも聞こえん声で、炭がしゅうしゅう鳴いとる気がした。
「待たしたのぉ、ほら足を入れてくれ」
「気が利くのう。お前が金さえ積むんじゃったら、あいつに相手をさせちゃるぞ」
手酌で酒を呑んでいた晴吾は卑屈に笑うと豆炭こたつに足を入れた。
わしは愛想笑いを返すと湯呑に酒をついだ。晴吾はいい気になって酒をあおった。
「まぁ干し柿ぐらいしかねぇけど食うてくれ」
わしは裏庭から持ってきたつまみをこたつの上に置くと、晴吾にかしづき何杯も酒を飲ませ続けた。
それから小一時間ほどたった。酔いつぶれた晴吾は、こたつの脇に転がると、そのまま眠りこけてしまった。
「おいそこで寝ちゃぁ風邪をひくぞ」
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