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「どこへ行くんじゃ?」
「おっ父と一緒に寝る。一人になったら、うち、ご飯食べれもん……」
所詮、わしと雪花は他人同士じゃ、信用されんでも仕方がない。
「待て」
わしは雪花の手を引くと、その顔を覗き込んだ。
「お前、晴吾のことが好きか」
「………わからん」
雪花は俯くと鼻をすすった。……わからん。……そうかもしれん。子供はあんな親でも嫌いたぁ言えんのじゃ。なんで子供は親を選べんのじゃろうか。わしは雪花の鼻水を上着の腹で拭いてやった。
「えぇか。わしは将来、お前になんぼでも恨まれちゃる。じゃけぇど、わしがボケるまでは、わしにお前のことを守らせてくれんか……?」
「そうしたら、おっ母に会えるん?」
「会える。わしが責任を持って会わせちゃる。じゃけぇ、今日だけは一緒に寝てくれんか」
そう言うと、雪花は首だけで返事をした。
「うん……」
わしは布団に入ると雪花の肩を抱いてやった。今日だけは寝ずの番じゃ。この手は離さん。そう誓いながら庭に積もる雪のことを考えた。今夜だきゃぁ、はなるべくぎょうさんの雪が降ってくれんかのう。山奥の田んぼが全部白うなったら、雪花は子供やり直すんじゃ。
気づけば雪花は、わしの傍らで寝息をたてとった。
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