こたつ

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「どこへ行くんじゃ?」 「おっ父と一緒に寝る。一人になったら、うち、ご飯食べれもん……」  所詮、わしと雪花は他人同士じゃ、信用されんでも仕方がない。 「待て」  わしは雪花の手を引くと、その顔を覗き込んだ。 「お前、晴吾のことが好きか」 「………わからん」  雪花は俯くと鼻をすすった。……わからん。……そうかもしれん。子供はあんな親でも嫌いたぁ言えんのじゃ。なんで子供は親を選べんのじゃろうか。わしは雪花の鼻水を上着の腹で拭いてやった。 「えぇか。わしは将来、お前になんぼでも恨まれちゃる。じゃけぇど、わしがボケるまでは、わしにお前のことを守らせてくれんか……?」 「そうしたら、おっ母に会えるん?」 「会える。わしが責任を持って会わせちゃる。じゃけぇ、今日だけは一緒に寝てくれんか」  そう言うと、雪花は首だけで返事をした。 「うん……」  わしは布団に入ると雪花の肩を抱いてやった。今日だけは寝ずの番じゃ。この手は離さん。そう誓いながら庭に積もる雪のことを考えた。今夜だきゃぁ、はなるべくぎょうさんの雪が降ってくれんかのう。山奥の田んぼが全部白うなったら、雪花は子供やり直すんじゃ。  気づけば雪花は、わしの傍らで寝息をたてとった。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加