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こたつ
炭焼きの仕事を終えると、山小屋の戸を閉め家路を急いだ。今年はいつになく雪が降る。こんな日には熱いうどんが美味かろうと思いながらけもの道を降りてきた。
またか……。
山奥の夜は早いと言うのに、まだ七つほどの雪花が素足のまま、晴吾の家の前に立たされとった。良く見ると雪花の顔は青く腫れ、同じ年頃の子供に比べると、えらく痩せて見えた。雪花はわしの姿に気づくと、うつむき視線をそらした。ただ震えながら雪に埋まった右足を別の足のうえに乗せ直すのだった。
雪花は酒浸りの親父のせいで臆病な人間に育ってしまったのだ。遠い昔、まだ幼かった娘を肺の病で亡くしたことを、思い出さずにはおれんかった。
わしは雪花の髪に積もった雪を手ではらってやった。それから雪除けに被った手ぬぐいを取ると、雪花の頭に巻いてやった。
「来い」
「おっ父に怒られる……」
「このままここにおっても死ぬだけじゃ」
わしはそう言うと頭に落ちる雪も気にせず、雪花の腕を引いて家に連れ帰った。
「着ろ、ちょっとは温いぞ」
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