雪と、想いが、積もる。

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ガチャリ 「来ちゃった。」  彼女だ。最近合鍵を渡していたのをすっかり忘れていた。というか漫画やアニメでしか聞かないその台詞はいかがなものか。 「何でこんな遅い時間に……雪も降ってたし、駅も人込みですごいだろうし大変じゃなかった?」 「うん……でもさ?こういう雪の日にこそ、彼氏に会いたくなるってもんじゃん?」 「そういうもんかな?」 「そういうもんだね。全部雪のせいだ。」 「なるほど。」  あまり深く考えずに納得しておく。取り敢えず彼女を部屋の中に入らせた。 「そうだ、ココア飲む?」 「飲む!……気が利くねぇ私の彼氏サンは。」  そう言って彼女はヒーターの前を陣取る。都内とはいえ彼女の家から僕のアパートまで割と移動時間がかかる。身体もかなり冷えているだろう。 「久しぶりに飲みたくなって、さっきコンビニで買ってきた。粉のやつ。」  僕はコンビニ袋から取り出したココアパウダーを2つのマグカップに入れ、さっき準備しておいた電気ケトルでお湯を注ぐ。電気ケトルって本当に便利。僕としてはこの利便性はもうちょっと世間に広まって欲しいところ。 「はい、できたよ。僕も入りたいからちょっと寄って。」 「どーもー。こうした方がいいんじゃない?」  僕が彼女の隣に座ったとき、彼女がちょっと寄ったかと思ったら、立ち上がって当然のように僕の目の前にすっぽり入ってきた。いわゆるあすなろ抱きをしているみたいな体勢。綺麗な黒髪ショートの髪の毛がすごく近い。 「結局あったかくなるの君だけじゃない?」 「そのあったかくなった私で温まるといいんじゃないかな。」    ちょっとだけ後ろを振り向いて、ニヤニヤしながら僕の目を見て彼女は言った。こういうとこ、ズルいよなぁ……。 「ひさびさに雪降ったなぁ~!こんな積もると思わなかったもん。駅からここまで歩いてくるの大変だった!寒いのなんの。いや、あれは寒いっていうより痛い!」  照れ隠しなのか、彼女が唐突に話を切り出した。 「東京ってこんなに降るもんなの?」  生まれも育ちも東京のアーバンガールな彼女に尋ねてみる。 「たまーにね。でもこんなに雪が積もることはあんまり無かったかも。」
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