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何でも、オッサン同士の草野球の練習試合があるらしい。まぁー、月曜日の夜からご苦労様な事で。残り一週間仕事しんどくて仕方なかろうに。
この情報を拾ってきたのは香櫨園。何でも、知り合いが選手の一人で、そいつに野球観戦部の話をしたら是非見に来てほしいと言われたらしい。
請われて行くなら部としてこれ以上の事もない。野球には素直な西九条がこれを快諾し、今に至るわけである。
日も落ちた午後七時。香櫨園の知り合いの所属する鳴尾商店街野球部と大物スターズの試合は始まった。
驚くべきことに、その内容は非常にハイレベルだった。鳴尾商店街の先発ピッチャーは、元甲子園球児。MAX135キロ前後と見受ける速球と、現代最高のスライダー系変化球と言われる真っスラことカットボールを駆使して六回をほぼパーフェクト、完璧なピッチングで打線を粉砕。打っては社会人野球経験者のベテランが大物スターズ投手陣をしぶとく捉えて三点を先取。六回裏終了時点で3対0と、実質鳴尾商店街野球部のワンサイドゲームとなっていた。
「たまげたわ。」
アダムとイヴの最高傑作からよもやそんな言葉が聞けるとは思っていなかった俺は、その語感と彼女のギャップに吹き出しそうになるのをやっとこさ堪えて、
何にそう感じたのかを尋ねてみた。彼女はこう答えた。
「あのピッチャーよ。野球団の。
とても草野球のレベルじゃないわ。社会人野球の決勝にいたって驚かない。」
「………確かに凄い。うん。同感。」
「例によってあなたは、数字としてのデータと見た目だけでそういっているんでしょうけど……私は違うわ。」
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