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「あのっ! あの……明日のお昼また会えますか? いえ……」
上層部の人間に時間を作って欲しいなど、図々しいにもほどがあると、言ってしまってから後悔をする。
ややあって頭上でかすかにエリクが笑った気配を感じた。
「裏庭で待っていればいいのかな?」
途端、アリーセは顔をほころばせた。
去っていくエリクの姿が夜の闇にまぎれて見えなくなるまで戸口に立って見送っていたアリーセは、あっと声を上げた。
肩掛けを返すのを忘れてしまったことに気づく。
でも……これで確実に返す口実が出来た。
またエリクに合うことができる。
春の浅い風は少し冷たかったが、上気した頬にはちょうどいいくらいであった。
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