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〝灯〟の時計台の鐘が昼を告げると同時に、アリーセは建物から飛び出し裏庭へと走った。期待に胸が弾む。
だが、エリクは忙しい人だ。
約束の場所には現れない可能性もある。
もしそうだとしても、残念だが仕方がないこと。
だから、裏庭のベンチに腰掛け本を読んでいるエリクの姿を見つけたときはあまりの嬉しさに胸のどきどきが止まらなかった。
ふと、読んでいた本から視線を上げ、エリクは息を弾ませるアリーセに向かって手を振った。
エリクに駆け寄り、アリーセは籐のかごと、昨夜借りた肩掛けを差し出した。
「肩掛けありがとうございました。それと、昨日のお礼にお弁当を作ったんです」
「君が?」
うなずいてアリーセは籐のかごの蓋を開けた。
中には色とりどりの具材を挟んだサンドイッチとハムとチーズ、茹でたじゃがいもをすり潰して丸めたクネーデルなど、たくさんのおかずが見た目よく、きれいに並んでいた。
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