5 未来へ

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 アリーセは自分の手のひらを見つめ、瞳を揺らした。 「術が使えた」  だろ? とイェンはにっと笑った。 「まさか、わざと?」 「そ、荒療治ってやつ? もしかして本気にしちゃったとか?」 「そんなわけ、ないじゃない……」  アリーセは顔を赤くして口ごもる。  まだ胸がどきどきしていた。  上目遣いでイェンを睨む。  とんでもないやつ!  あたしもけっこう遊んできたけど、こいつはそれ以上に遊び慣れている。 「ま、自分では気づいていないだけで、魔力は戻っていたんだよ。俺が最後の一押しをしてやったってわけ」 「だからって、からかうなんて!」  すっとイェンの手が頭に伸び、髪をなでる。 「悪かったって。そう怒るな。大切な人って言ったのは嘘じゃない。それに、あんたに手なんか出せないし」  またしても意味不明なことを言うイェンの言葉にアリーセは首を傾げたが、ふと思い出したようにポケットから手紙を取り出した。  イェンが何それ? とのぞき込んでくる。 「エリクに手紙をもらったの。でも、術がほどこされていて開けることができなかった」  けれど、今なら開けることができるかもしれない。  アリーセはもう一度術を唱えようと、深呼吸をする。  すっと背後から伸びたイェンの手が、手紙を持つアリーセの手に重ねられる。  肩越しにイェンを振り返り、アリーセはうなずいた。
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