43人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
帰り道、雪がちらちらと降ってきた。
東京に降る、この冬初めての雪。
街灯に照らされた雪を見上げたら、また涙があふれてきた。
そのとき突然バッグの中が震えた。スマホを取り出すと着信中だった。
――光希だ。
どうしよう。きっと光希は怒ってる。私がずっと無視してたから。
迷っているうちに電話が切れた。私は白い息を吐く。
立ち止まったまま雪を見上げると、またスマホが震えた。
『作ったよ』
文字と一緒に送られてきた画像。
「雪だるま……」
なにしてるのよ。仕事、忙しいんでしょう? そんな暇ないんでしょう? なにしてるのよ。
『梨乃と一緒に作った雪だるま、覚えてる?』
私が返事をしないのに、光希からのメッセージは続く。
『雪の降った夜に部屋抜け出したよな。親にめちゃくちゃ怒られたっけ』
うん、そうだね。懐かしい。
『なんでかなぁ。雪を見るとあの夜のこと思い出しちゃうんだよ』
ああ、光希も覚えていたんだ。
『だから俺、こっちにきてから毎晩思い出す』
私は画面に浮かび上がる文字をじっと見つめる。
『梨乃のこと』
最初のコメントを投稿しよう!