雪明かりの夜、君を想う

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『今夜も寒いね』 『こっちは大雪。ヤバいくらい降ってる』 『よかったじゃない。光希は雪が降ると、犬みたいに外走り回ってたもんね』 『いつの話だよ。明日は朝から雪かきなんだぞ。めんどくせー』 私はスマホの画面から視線をはずし、つけっぱなしのテレビを観る。 ちょうど映った週間天気予報は、晴れのマークが並んでいる。 東京の街に、雪はまだ降らない。 『東京(そっち)はいいよな。俺はもう、雪なんてうんざりだ』 ほんの少しの雪がちらつくだけで、待ちきれないように外へ飛び出していったくせに。 一緒にランドセルを背負って歩いた光希は、少し大人になって、私の知らない街で働いている。 『明日早いから寝るよ』 『おう、またな』 『おやすみ』 メッセージを閉じて、ベッドの中にもぐり込む。 枕を抱えて、毛布をかぶり、今夜も光希のいない部屋で眠りについた。
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