44人が本棚に入れています
本棚に追加
私たちの住んでいた街に、めずらしく大雪が降った夜。
四階の窓から見える景色が、どんどん白く変わっていった。
きっと隣の部屋に住んでいた光希も、私と同じものを同じ気持ちで眺めていたのだろう。
朝まで待ちきれなかった光希に誘われて、家をこっそり抜け出した。
降り続く雪が、見慣れた景色を幻想的に変えていく。
夜なのにぼんやりと明るい、音の消えた不思議な世界。
その中に立っているのは、私と光希の二人だけ。
光希は嬉しそうに、まっさらな雪の上に小さな足跡をつけた。
「明日の朝じゃ、誰かに足跡つけられちゃうから」
そして二人で雪をかき集め、大きな雪だるまを作ったのだ。
あの夜のこと。光希はまだ覚えているかな。
もしかして、いつまでも過去を思い出して立ち止まっているのは、私だけなのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!