0人が本棚に入れています
本棚に追加
少年は、昂る気持ちを鎮めるように、ほうっと息を吐いた。
冬の空気はキンと冷えて、吐く息が白い。
今から『コタツ争奪戦』が始まる。正しくは、コタツを奪い合うのではなく「コタツに入る権利」を奪い合う戦いだ。
コタツに入る事が出来るのは、一部の限られた人だけの特権であり、少年は何としてもそれを手に入れなければならなかった。
少年はルール説明を続ける声を意識から追いだし、静かに瞑目した。少年自身は初参加とはいえ、争奪戦は毎年行われているのだ。ルールはもう知っている。
・戦う際は、脚を使う事
・手を使えば反則負け
・武器の使用は禁止
・優勝者だけが、コタツに入る栄誉を与えられる
反則負けなど論外だ。足技は十分に鍛えたのだ。
なんとしても勝って、コタツに入る。
それが僕に課せられた使命なのだからッ!
スタート開始を告げる声と同時に、少年は鋭い一撃を繰り出した。
いまここに『コタツ争奪戦』の火蓋が切って落とされた。
最初のコメントを投稿しよう!